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行動モニタリングは管理が目的だと生産性を損なう
フロリダ州を拠点とするソーシャルメディアマーケティング会社の98バック・ソーシャルは、パンデミックによるオフィス閉鎖が始まった当初、10分ごとにデスクトップのアクティビティのスクリーンショットをランダムにキャプチャするアプリケーションを、全従業員のコンピューターにインストールした。アマゾン・ドットコムとフェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)は、オフィスに戻るよう命じられた従業員が定期的に出勤していることを確認するため、社員証バッジの読み取り状況を追跡していることを明らかにしている。JPモルガン・チェースは、従業員がズームやメール、スプレッドシートなどにどれだけの時間費やしたかを記録する独自のソフトウェアを開発した。
これらの実例は、デスクトップのモニタリング、生体認証スマートバッジ、位置追跡、デスクセンサーなど、高度化が進むテクノロジーによって従業員の生産性を追跡しようとする動きの一部だ。この傾向はパンデミックの発生前から見られたが、従業員がハイブリッドワークやリモートワークに関心を持ち続けていることから加速している。最近の報告によると、雇用者の80%近くが従業員に対する何らかの電子的なモニタリングを行っている。
モニタリング技術を使用する最終的な決定は通常、企業の上層部が下す。しかし現実には、こうしたシステムの導入と活用は、一般的に監督者に委ねられている。
筆者らは次の2つの重要な疑問について理解を深めることにした。第1に、従業員はモニタリングについて監督者をどの程度、非難しているのか。第2に、監督者はモニタリングの影響を軽減するためにできることがあるのか。
監督者は、モニタリングシステムを「使うかどうか」コントロールできないとしても、モニタリングシステムからの情報を「どのように使うか」はコントロールできるのではないかと筆者らは考えた。具体的には、監督者がシステムを管理(業績評価)目的で使用するか、フィードバック(業績向上)目的で使用するかによって、部下との関係が悪化するかどうかが決まると予想した。
この予測を評価するため、2つの研究を行った。まず、クラウドソーシングプラットフォームのプロリフィック・アカデミックで募集した米国在住の参加者186人を対象に、オンライン実験を行った。参加者の半数には、研究管理者が彼らのウェブカメラにアクセスして行動を記録し、テストのカンニングを防ぐためにコンピュータをモニタリングすると告げた。実験の信憑性を高めるため、参加者のウェブカメラを一時的に起動して録画をシミュレートしたが、実際には参加者の実験行動は録画しなかった。
参加者の約半数は、最初のテストの後、研究管理者から肯定的かつ建設的なフィードバックを受けた。モニタリングされた参加者には、フィードバックが研究管理者の観察に基づくものであると伝えた。
また、米国を拠点とするさまざまな企業の正社員298人とその監督者を対象に、実地調査を行った。従業員には数カ月にわたって、自分がどの程度モニタリングされているか、監督者との関係をどのように認識しているかを評価する一連のアンケートに答えてもらった。そして、彼らの監督者に対して、部下のパフォーマンスや非生産的な行動(逸脱行為)の評価をしてもらった。