
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
幸せを感じていた仕事に、いまは不満を持っていないか
昔は仕事にやりがいや幸せを感じていたけれど、いまは不満ばかり──。そのような時は、もっとよい上司や、もっと大きなチーム、新しいプロジェクト、いまとは違う役割、完全に新しい組織など、抜本的な変化が必要な可能性もたしかにある。だが、不満の原因は、科学者が「習慣化」と呼ぶものかもしれない。人間の脳は、変化のないものに対し、次第に反応しなくなる傾向がある。つまり、かつては喜びや意義を感じさせてくれたものが、時間が経つにつれて、そうした感情をもたらさなくなるのだ。
たとえば、新しい香水は、吹きつけるとすぐにうっとりした気分にさせてくれる。だが、繰り返し使っているうちに、つけていることを感じなくなる。それと同じことが、職場でのタスクや役割、チーム、組織についても起こる。さらに、崇高あるいは刺激的なキャリアを積んでいる人にも起こる。がんの新しい治療法を長年研究してきた人は、目的意識が薄れて、倦怠感を覚えるようになるかもしれない。あるいは、かつては大統領選挙の取材に情熱を注いでいた政治記者が、いまはだらだらと取材を続けていたりする。
幸い、習慣化には「バラエティ」という解毒剤がある。いつもと同じ一日に、いつもとは違う活動を加えると、非習慣化が起こり、新しい視点で物事を見ることができる。新しい趣味に挑戦してみるのもよいし、いままで知らなかった同僚と交流を持ったり、いつもとは違う領域の仕事を引き受けたりするのもよい。あるいは、通勤ルートを少し変えるだけでもかまわない。こうした多様な活動によって、あなたは学び、変化し、そして進化していく。最初はやりにくいかもしれないが、最終的にはいままで以上の喜びを与えてくれるはずだ。
バラエティが喜びをもたらしてくれる理由の一つは、私たちの脳を学習モードにしてくれることにある。学習は内発的な報酬をもたらす。ソルボンヌ経済センター准教授のバスティアン・ブレインとイェール大学助教授のロブ・ラトリッジという2人の神経科学者がロンドンで行った研究は、それを示している。この研究では、ボランティアにゲームをしてもらい、どのような気分かを数分おきに報告してもらった。すると、彼らが最も幸せを感じたのは、勝利して最大の賞金を得た時ではなく、そのゲームについて何かを学んだ時であることがわかった。