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「インスタントファッション」の時代が到来
過去30年間で、3つのテクノロジーの変化がファッション業界の進化を促進してきた。まず2000年代初めに、高度データ分析、RFID(非接触型のタグ情報認識技術)、サプライチェーンのローカライズが、「ファストファッション」台頭の推進力になった。次の10年では、インターネットに支えられたeコマースが登場し、消費者直接取引型(DTC)ブランドが出現した。
現在、ファッション業界のビジネスモデルがまたしても大きな変化の時を迎えている。今回は、モバイルコマース、AI(人工知能)、ライブショッピング(ライブ配信動画を通した商品の購入)、リアルタイムでの格安商品の生産が組み合わさって、筆者が「インスタントファッション」と呼ぶ時代が到来しつつある。
中国のアパレル企業シーインは、このモデルを追求する最大にして最もよく知られたブランドだ。シーインが米国に進出してから、まだ6年も経っていない。当初の売上高は15億ドルほどだったが、その後、20倍以上伸びて、いまやH&Mよりも大きく成長し、ザラの規模に近づいている。シーインの2025年の収益目標は500億ドルを上回る。
ファッションがもたらす社会および環境への負の影響については、十分な裏付けがある。とはいえ、インスタントファッションの台頭は、スピードと手頃感、使い捨てを優先するモデルの極致を示している。最近、シーインがIPO(新規株式公開)を申請したことを踏まえると、インスタントファッション関連の目に見えにくい負の外部性を消費者と政策立案者が正しく見定めることが極めて重要である。新たな企業が市場シェアを獲得し続けている時はなおさらだ。
シーイン、そしてその競合企業がますます推し進めるインスタントファッションは、2つの大きなテクノロジーと行動の変化に後押しされている。
モバイルへの注目
世界のスマートフォン所有台数は過去7年間でほぼ倍増し、60億を超えた。同じ期間に、eコマースはデスクトップからモバイルへと移行し、現在、取引の半数近くがモバイルデバイス上で行われている。デバイスがいつもそばにあり、中毒性の高いエンタテインメントやソーシャルメディアに接続され最適化されているため、いまや一般的な米国人は1日5時間以上、スマホに釘づけになっている。