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資本コストの上昇は脅威ではない
今日の資本コスト上昇に企業はどう対処すべきか。多くの経営者や投資家が昨年(2023年)の金利上昇に当惑した。実際、3100人の企業幹部を対象に、昨年の事業運営に混乱を来した要因について調査したところ、金利とインフレが上位を占めた。また、2024年の事業に対する脅威について尋ねたところ、政治、規制、AI(人工知能)、気候変動といった他の問題を差し置いて、金利とインフレが再びトップになった。
資本コストを脅威に感じる必要はない。まず、金利が上昇したとはいえ、異常な低金利が続いた10年を経て、通常の水準に戻っただけなのだ。企業は、今日のような水準での事業活動を十分に経験している。それを思い出して再び適応すればよいのである。
それよりも、資本コストを戦略や計画と結びつけている企業が、実際に大きな利益を出しているということが重要だ。人は、安いものは無駄にする。資本コストが通常の水準に戻ったいま、資本コストを経営と結びつけず、ビジネスのやり方を変えないのは無責任としか言いようがない。それを変えるには、経済利益(EP)という概念を再発見することが必要だ。EPとは、売上高から売上原価や販管費だけでなく、その売上げを生み出すために必要な資本コストも差し引いた利益を言う。
当社は、30年以上にわたってその研究を行ってきた。この間、資本市場の原則を企業内部に取り入れた経営陣が、同業他社の株価指数を50%以上上回る株主利益を上げている事実を明らかにしてきた。この驚異的な差は、EPを考慮した経営によって価値が生み出されるだけでなく、EPを無視することによって価値が浪費されることの証でもある。
経済利益(EP)を知る
EPがこれほどの威力を持っている根本的な理由を説明しよう。厳密な分析を行うと、ほぼすべての企業において、価値創造が高度に集中しているのだ。大企業では通常、使用資本の40%未満が自社の株主価値の100%以上を生み出しており、その一方で、使用資本の25~35%が価値を破壊している。この傾向は、業界や事業部門、製品、チャネル、顧客に至るまで、あらゆる粒度のレベルで見られる。