成長できる企業は「真の差別化要因」を熟知している
Artur Widak/NurPhoto/Getty Images
サマリー:これからの成長戦略として何を採用すべきか、常に正解を知っているように見える企業がある。こうした企業に共通するのが「戦略の明確さ」だ。そのカギとなるのが、自社の差別化要因を理解することである。本稿では、... もっと見る差別化要因を理解したうえで戦略を明確にして実行する方法を、コストコ、セールスフォース、アマゾン・ドットコム、そしてパタゴニアの例を交えて紹介する。 閉じる

自社の差別化要因を理解しているか

 企業が今後の成長戦略を定める際、選ぶことのできる道筋はいくつもある。たとえば、インターネットとつながる「スマート冷蔵庫」をつくっている企業は、次の戦略として、業務用冷蔵庫に事業を拡大させるべきか。それとも、スマートドアベルの市場に進出すべきか。あるいは、顧客に冷蔵庫をただ販売するのではなく、彼らの食品冷蔵のニーズに合わせて「プロダクト・アズ・ア・サービス」のモデルを採用し、サブスクリプション料金を受け取る道を考えるべきか。

 ビジネスの世界には、次にどのような成長戦略を採用すべきかについて、常に正解を知っているように見える企業がある。そうした企業は、言ってみれば「戦略の明確さ」という武器を持っている。戦略を明確にするためのカギは、市場において自社の真の差別化要因になっているものは何かを知ることだ。

 単に、自社がうまく実行できていることを明らかにするだけでは十分でない。同業他社よりもうまく、かつまったく異なる形で実行できていることを特定する必要がある。その会社ならではの特徴的な強みを把握しなくてはならないのだ。そうした強みは、しばしばその会社の文化に根差していて、顧客からも高く評価されており、同業他社が模倣することが難しい。

 小売業界の巨人コストコについて考えてみよう。一見すると、コストコの成功の方程式は、いたって単純なものに思えるだろう。要するに、薄利多売を行っているだけ、という印象があるかもしれない。しかし、同社に成功をもたらしている要素は、それだけではない。

 コストコが傑出しているのは、コストリーダーシップ戦略をよく理解している点だ。コストリーダーシップ戦略とは、ただ単に価格を引き下げるだけでなく、効率的なオペレーションを行うことを目指す総合的なアプローチである。