AIを自社の成長戦略に含めるべきか、見極める方法
Illustration by Carl Godfrey
サマリー:スティーブ・ジョブズは1998年、アップル復帰後の成長戦略として「次の大波を待つ」ことを掲げた。この言葉は、テクノロジーの未来を先読みし、競合より先行することの重要性を端的に示している。現在、AI(人工知能... もっと見る)が次の大きな波と見られ、新たな成長機会として期待されている。では、はたして自社にとってAIは本当に大波なのだろうか。本稿では、その判断を行うための基準を提示する。 閉じる

ジョブズの言葉に凝縮された成長戦略の核心

 スティーブ・ジョブズはアップルに復帰した翌年の1998年、長期的戦略は何かとの問いに対し、「次の大波を待つ」ことだと述べた

 この先見の明に富むイノベーターは、いかにも彼らしい簡潔な答えの中で、あらゆる成長戦略の核心を明らかにした。すなわち、テクノロジーの行く先を──理想的には競合他社よりも先に──追うことだ。SF作家フレデリック・ポールが述べたように、課題は「自動車ではなく交通渋滞を予見すること」である。

 現在の多くの兆候は、次の大波がAI(人工知能)であることを示している。効率性、新たな製品やサービス、利益向上の可能性などを通じてその波は広がり、人間のスキルを拡張する能力として機能する。2024年も厳しい経済情勢が予想される中、潜在的な成長エンジンとしてのAIの魅力は高まっていきそうだ。

 とはいえ、確実に勝てる賭けや、次のトレンドがヒットする保証などビジネスにおいては存在しないことを思い出すと、身が引き締まるのも事実である。結局のところ、メタバース、3Dテレビ、グーグルグラス、ブロックチェーン、そして相変わらず予測不可能な仮想通貨に、情報通の投資家が資金を投じた時期もあったのだ。

AIを成長戦略の一部とすべきか

 筆者らが考える重大かつ最も適切な問いは、次のように絞り込める。あなたの会社は、成長戦略として「いま」AIに賭けるべきだろうか。以下では、この問いへの答えを出すうえで役立つ5つの重要なステップに焦点を当てる。