
Igor-Kardasov/Getty Images
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サマリー:数年前、電気自動車(EV)の未来に期待が集まっていたが、現在、その熱は冷めている。EV市場は、アーリーアダプターからより幅広いセグメントの消費者が求めるものへと移行する時の壁に直面しているのだ。本稿では、... もっと見る「テクノロジー採用ライフサイクル」という考え方をもとに、自動車メーカーが今後、どのようにEVの拡販を進めればよいのかを解説する。 閉じる
アーリーアダプターによる購入は一巡した
数年前、世の中は電気自動車(EV)の未来に向けてまっしぐらに進んでいるかに見えた。テスラの時価総額は1兆ドルに達し、レンタカーのハーツ・グローバル・ホールディングスはテスラと40億ドルの供給契約を結び、米バイデン政権は2030年までに新車販売の50%をEVにする計画を発表し、ゼネラルモーターズ(GM)は2035年までに新車販売を100%EVにすると発表した。
ところが、何かがおかしい。テスラは2023年、何度か値下げに踏み切り、最終的に最も安いモデルSの価格は約25%下がった。ハーツは、テスラ車を売却する計画を発表した。GMは、EVに関する目先の目標を放棄し、EVピックアップトラックの生産を延期したほか、本田技研工業とのEV共同開発を中止すると発表した。販売店ではEVが売れ残っていることが定期的に報じられるようになった。こうした流れを踏まえて、トヨタ自動車会長の豊田章男は、新車販売の大部分をEVが占めるようになるのは、数十年先になるだろうとの予測を示した。
その予測を裏づけるかのように、ピュー・リサーチセンターは最近、米国の成人の半数が、次に買う車はおそらくEVではないと答えたと報告している。
いったい何が起きているのか。
その答えとして筆者は、EV市場が「テクノロジー採用ライフサイクル」の典型的に難しい時期にさしかかっているのだと考えている。具体的には、ある商品が、アーリーアダプターが求めるものから、さらに幅広い市場セグメントの消費者が求めるものへと移行する時の壁にぶつかっているのだ。