戦略の実行を阻む、従業員の心理的障壁をどう取り除くか
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サマリー:企業において戦略の実行が妨げられる真の原因は、戦術的側面ではなく、従業員の心理的側面にある。つまり、戦略をどう実行するかではなく、どのような組織環境で実行するかというコンテクストを重視しなければならな... もっと見るいのだ。本稿では、戦略の実行を妨げる可能性がある目に見えない障壁を見つけ、それが根を張る前に対処する方法を紹介する。 閉じる

戦略の実行を妨げる原因は何か

 1992年、ロバート・キャプランとデイビッド・ノートンは、有効な企業戦略の実行を阻む4つの障壁を示した。それはすなわち、理解の欠如とコミュニケーション不足、インセンティブの欠落、そしてまとまりのない予算だ。その後、このリストはほかの研究者らによって発展し、目標の不一致や、リソース不足、パフォーマンス追跡の不備といった障壁が明らかになった。それでも、企業はいまだに戦略の実行に苦労している。これはリーダーによるコミュニケーションが不足しているだけなのか。それとも、別のところに本質的な問題があるのか。

 真の問題は、戦略実行の戦術的側面ではなく、心理的側面にある。変革に必要なマインドセットを考える時、リーダーはまず、何が認識の形成を助けているか考える必要がある。つまり、戦略をどう実行するか(オペレーション)ではなく、どのような状況で実行するか(コンテクスト)を考えるのだ。これは組織全体を見渡して、前進を妨げる目に見えないソフトな障壁を見つけるものといえる。

 そこで本稿では、オペレーション指向からコンテクスト指向に考え方を変えて、戦略の実行を妨げる可能性がある目に見えない障壁を見つけ、それが根を張る前に対処する方法を紹介する。

戦略が奏功する環境を把握する

 戦略は、それだけで存在するものではない。戦略が実行される環境は、組織においてそれが受け入れられるかどうかに影響を与える。