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「戦略的なリーダー」が必ずしも企業を成長させるわけではない
戦略計画の策定は、企業が事業ライフサイクルを予測し、管理するうえで重要な役割を果たすものだ。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的流行や戦争のような「ブラックスワン」現象はもちろんのこと、デジタル技術の革新、気候変動、脱グローバル化などの影響によって、波のうねりは不規則なものへと変わり、企業は潮流や交差流、激流、突風に悩まされている。自社に関係があるもの、ないもの、あるいは相互に関連づけられる多種多様な困難には共通点がある。それは、「予測不可能」ということである。
ディスラプション(破壊的変化)や不確実性は、その性質上、戦略計画を台無しにする。適度に確実性のある仮定に基づいて戦略を立てることができない場合、あるいはその合理的な仮定が予測不可能な出来事によって覆された場合、企業はどうすればよいのだろうか。それでも計画を立て、資本を配分し、将来のために投資をしなければならない。ディスラプションの時代に成功するカギは敏捷性だと主張する人もいるが、軸足を変えずに方向転換していなければ、堂々めぐりになるだけである。
筆者らが所属するアリックスパートナーズが毎年発表している「ディスラプション・インデックス」では、グローバル企業の幹部3000人注を対象に、企業が何に悩まされているかを調査している。2024年レポートでは、5人中3人が、どの破壊的な力を優先すべきかを判断するのがますます難しくなっていると答えている。しかし、優先順位をつけなければならない。それがリーダーの仕事である。
このような中でも、非常にうまくいっている企業がある。およそ5人に1人が、自社は売上高成長率で業界をリードしていると答えた。また、2023年の会社の利益が10%以上伸びたと答えた人もほぼ同じ割合いた。全体の8%(3000人中249人)が、自社が成長率と収益性の両方において上位5分の1のグループに属していると述べた。
さて、調査によれば、これらの経営幹部は、ほかの2751人よりもけっして「戦略的」ではなかった。回答者に、リーダーシップ特性12項目の中から、破壊的な影響に対処するうえで最も重要な3項目を選択してもらったところ、全体では、戦略的思考(39%)と迅速な意思決定(36%)が上位2項目に選ばれた。しかし、収益性と成長率の上位グループにおいては、迅速な意思決定が34%対33%で戦略的思考をわずかに上回った。
彼らの抜きん出ている理由が戦略的思考でないとしたら、その差はどこから生まれるのだろうか。本稿のために、調査データの追加分析を行い、このグループの意識と行動を他のグループから切り離した結果、3つのことが明らかになった。
高成長・高収益企業のリーダーは、ディスラプションを受け入れる
このグループでは、4人中3人が、自社は常に、あるいはおおかた業界の破壊的変化を推進していると答えている。これとは対照的に、残りの企業の経営幹部の59%が、自社は中位か後れを取っていると回答しており、状況変化を引き起こすというよりは、状況変化に対応している傾向が強いといえる。