会社への定着率を上げる新入社員研修とは
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サマリー:優れた新入社員へのオンボーディングは、会社に大きな価値をもたらす。従業員はオンボーディングを通して仕事への理解を深めることができ、それが生産性や忠誠心、エンゲージメントの向上へつながる。しかし、多くの... もっと見る企業が新入社員へのオンボーディングに失敗している。リーダーは一度に多くの情報を与えすぎているのだ。本稿では、新入社員に効果的かつ効率的にオンボーディングを提供するための3つの戦略を紹介する。 閉じる

新入社員オンボーディングへの満足度が低い理由

 新入社員の効果的なオンボーディングが大きな価値を持つことは、すでに知られている。優れたオンボーディングのプロセスは、仕事内容、組織の規範、期待されるパフォーマンスについての明確な情報を提供し、従業員の生産性を高めるだけでなく、忠誠心やエンゲージメントを高め、離職率の低下にも役立つ。

 しかし、多くの組織がその目的を達成できずにいる。給与計算システムのプロバイダー、ペイチェックスの2022年の調査によると、オンボーディング体験に満足している新入社員は約半分に留まっている。

 オンボーディングの失敗は、新入社員と企業が感情的な絆を築くことを妨げ、エンゲージメントに影響を与え、従業員の定着率を低下させるという負のスパイラルを招きかねない。新入社員の離職率は最初の45日で20%に達し、約3分の1が入社後90日以内に仕事を辞めてしまう。

 よくある間違いの一つは、1日のオリエンテーションと福利厚生の簡単な説明という形式的な体験で済ませることだ。さらに、あまり認識されていないが、同じように破壊的で蔓延しているのが、一部の企業に見られる「過剰なオンボーディング」である。

 筆者は学習デザインのコンサルタントとして働く中で、新入社員の初日に従業員マニュアルを端から端まで読み聞かせ、スラックやメール、Boxなどすべてのプラットフォームを瞬時に使いこなすことを期待するマネジャーの話をよく耳にする。従業員を製造工場の「クイックツアー」に案内して、さまざまな機能を矢継ぎ早に説明するマネジャーもいる。

 こうしたリーダーの行動は善意から来るものかもしれないし、新入社員が新しい役割に慣れるように手助けしたいと心から思っているかもしれないが、大量の情報を浴びせることは逆効果になりかねない。私たちの脳が一度に処理できる新しい情報の量は限られている。新しい環境に入ったばかりの人ではなおさらだ。結果として、新入社員はオンボーディングの間に過剰な(よけいな)認知的負荷の影響を受けやすくなる。それがパフォーマンスの低下を引き起こし、新しい仕事はあまり自分に合わないと判断して退職することにつながる可能性もある。

 筆者は学術界と企業における研究を通じて、リーダーが従業員の負担を軽減し、新入社員に効果的かつ効率的にオンボーディングを提供するために実践できる3つの戦略を見出した。