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宇宙探査と医療の世界からリーダーが学ぶべき教訓
誰もが理解しているように、変化は必ずやって来ると思っておかなければならない。特に、今日のように物事のスピードが速く、予測可能性が乏しい時代において、不確実な状況にうまく対処する能力は、業種を問わず、成功するために不可欠な要素だ。そこで、リーダーは、厳しい時間的制約の下で想定外の緊急事態にも対処できるように、あらかじめチームのメンバーの準備を整えておく必要がある。そして、この点に関しては、事前の訓練が物を言う。
そのような徹底した準備をすることに関して、宇宙探査と医療の両分野の右に出る領域はない。たとえば、宇宙飛行士が必要な行動をすべて体に覚え込ませるのはさすがに無理があるので、宇宙船ではいざという時に取るべき行動を簡潔に記したカードをコックピットのあちこちに貼りつけてある。カードの指示通りに行動して宇宙船の安全を確保すること、それにより時間を節約して状況を正確に把握し、問題の根本的な原因を確定させ、所定の手順とチェックリストに従ってその問題を解決して、正常な状態に復旧できるようにすることが狙いだ。
同様に、医師たちは、マニュアルやアプリの類いをいつも手元に用意していて、さまざまな緊急事態で取るべき重要な行動をすぐに確認できるようにしている。これは、医師たちがその内容を知らないからではない。誰もが同じアプローチを実践するようにすることが目的である。
一見すると、宇宙探査と医療はまったくかけ離れた分野のように見えるかもしれない。しかし、この2つの分野で採用されている取り組みの共通点に着目すると、有益な教訓を引き出せることが多い。
スペースシャトルの離着陸に始まり、手術室における大量出血への対処に至るまで、この両分野で実践されている取り組みには、ほかの分野にも応用できる教訓がしばしば含まれている。本稿の3人の筆者は、それぞれ社会科学者、宇宙飛行士、医師として経験を積んできた。本稿では、宇宙探査と医療の世界を掘り下げて検討し、両分野の共通点を明らかにすることを通じて、想定外の緊急事態に対処できるチームを築きたいと考えているリーダーに役立つ教訓を紹介する。
最悪の事態を想定する──すべての出発点
プロダクトデザイン会社のIDEOは、多様性のあるメンバーを集めてチームをつくり、開発中の商品の潜在的なユーザーが生活する環境にどっぷり浸からせる手法を採用していることで知られている。この活動では、単に顧客が身を置く環境を観察するだけでよしとはしない。エンドユーザーが求めているものを深く理解し、ユーザーの思いに共感することまで目指す。