職場のメンタルヘルスを改善する5つの戦略
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サマリー:多くの従業員は、企業に自分のメンタルヘルスをサポートしてほしいというニーズを持っている。しかし、企業はそのニーズに追いついていない。今日、職場のメンタルヘルスを改善するためには、なぜ、どこで、どのよう... もっと見るに働くかという問題と向き合う必要がある。本稿では、企業が従業員のメンタルヘルスへのニーズに対応し、職場に健全な文化を再構築することの重要性を説く。 閉じる

ビジネスパーソンのニーズに、職場文化が追いついていない

「これほど見られていると感じたことはない」

 2023年にThe Anxious Achiever(不安な達成者・未訳)を出版して以来、このような感想が次々に届いており、感謝している。そして、同時に怒りも覚える。

 私の受信箱は毎日、目頭が熱くなるような話で埋め尽くされる。最近、リンクトインで個人的に世論調査を行ったところ、回答者1228人のうち87%が、ストレスをもたらす同僚やクライアント、上司、あるいは仕事の状況が、片頭痛、吐き気、脱毛、睡眠不足、体重の変化、自己免疫の問題、パニック発作などネガティブな身体的症状のきっかけになったと述べている。

 私のコミュニティだけでの話ではない。ヘッドスペースの「Workplace State of Mind」(職場の心理状態)調査2024年版によると、仕事のストレスは77%の従業員の身体の健康に、そして71%の従業員の仕事以外の人間関係に、ネガティブな影響を及ぼしている。2022年3月のギャラップの分析によると、組織がウェルビーイングを気にかけていると感じている従業員は4人に1人以下だった。新型コロナウイルスのパンデミックが始まった時期に同じ回答をした人の半分ほどの数字だ。

 何が起きているのだろうか。メンタルヘルスをめぐる福利厚生や会話が変化している一方で、職場の文化は追いついていないのだ。職場のメンタルヘルスの専門家であるナターシャ・ボウマンも、パンデミック時には高いレベルの共感と思いやりが生まれたが、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)やウェルビーイングイニシアティブの後退など、パンデミック以前の習慣に変わりつつあることを目の当たりにしている。人々の反応は鈍い。

「今日では、労働者は給与以上のものを求めている。自分のメンタルヘルスのニーズを尊重してほしいと要求しているのだ。アンケートに回答するようなことだけでなく、従業員が悪影響を恐れずにセルフケアを優先し、それが認められていると感じられる文化をつくることだ」とボウマンは言う。

 まさにその通りだ。企業と従業員にとってこの重要な時期に対処し、前進するために、職場のメンタルヘルスに関する私の理解を共有したい。賢明な同僚たちから学んだことや、著書を出版して以降、職場のメンタルヘルスに関する数多くの基調講演や対話から学んだことをもとに見出したものだ。

仕事を起点に考える

 今日、職場のメンタルヘルスを改善するためには、なぜ、どこで、どのように働くかという問題と向き合う必要がある。勤務が終わったら仕事用の携帯電話をしまうとか、仕事のメールを利用する時間を決めるといった手っ取り早いアドバイスは、2020年の話に聞こえる。