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AIツールの導入が従業員の能力評価に与える負の影響
クリエイティブな仕事は、AI(人工知能)からどれほどの影響を受けるのだろうか。AIの能力は計り知れず、ますます向上している。作業スケジュールの構造化、管理業務の実行、意思決定者へのアドバイスなどあらゆることが可能だ。業界の思想的リーダーがAIの潜在能力を楽観的に捉えるのも無理はないだろう。この楽観的な見方の大部分が、「AIは膨大な量のデータから学習して効率を最大化するので、人間がAIと協働すれば、自由に使える時間が増え、クリエイティブな取り組みを拡大することができる。したがって、より優れたイノベーションが促進される」という主張の上に成り立っている。この主張は、多数の分析や企業リポートによっても支持されてきた。
しかし、テクノロジーの専門家と企業の熱烈な支持があるとはいえ、AIツールの採用によって本当に人はクリエイティブな取り組みができるのだろうか。この問いに答えるために、筆者らは一連の実験を行った。アルゴリズムツールの導入で、クリエイティブかつ革新的な仕事に関する従業員の評価やリソースがどう変わるかを検証したのである。実験の結果によると、こうしたツール、特に従業員の生産性を監督するアルゴリズムツールが、実際には従業員の能力の過小評価を招くことを示唆しており、アルゴリズムツールを軽率な考えで導入する企業は楽観的ではいられなくなるかもしれない。
リーダーは、AIのおかげで人間が仕事のクリエイティブな側面に集中できるようになるはずだと決めつけてはいけない。代わりに、組織の現実を見つめるとともに、アルゴリズムツールによってパフォーマンスを評価するリーダーの能力がいかに変化するかを考慮する必要がある。ほとんどの組織において、最高幹部が誰にクリエイティブな潜在能力があると認識するかによって、どのチームがイノベーションの取り組みを推進する上層部のサポートを得られるかが決まる。
筆者らの研究から、AIが仕事のプロセスの一部を管理している場合、チームのクリエイティブな潜在能力をリーダーは低く評価することがわかった。もしそうならば、こうしたツールは結果的に、従業員がクリエイティビティを発揮してイノベーションを推進する力を損なうことになる。
アルゴリズム管理はリーダーの認識をどのように変えるか
アルゴリズム管理とは、AIアルゴリズムによって従業員の作業の流れを監督し、タスクを設定し、パフォーマンスを評価することを指す。このアルゴリズム管理に関する最近の筆者らの研究からは、アルゴリズム管理と評価の関係に驚くべき見解が示されており、AIの利点について壮大な主張をする前に、AIシステムの導入をより慎重に検討する必要があることを示唆している。一連の実験では、AIアルゴリズムが管理する作業チームのメンバーは、人間が管理するチームよりもクリエイティビティが低い(高くはない)と見なされることがわかった。またアルゴリズム主導のチームは、イノベーションのプロジェクトのために配分される資金も少なかった。