学位を問わないスキルベースの採用を成功させる6つのステップ
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サマリー:多様な労働力を確保するために、学位要件を撤廃し、スキルに基づく採用を行う企業が増えている。研究によると、学位を持たない採用者のほうが企業の定着率が高いという。しかし、実際、現場は従来の採用方法に頼り続... もっと見るけてしまうため、学位を持たない候補者が選ばれるケースは少ない。本稿では、スキルベースの採用を実現するために、採用担当マネジャーが取るべき6つの実践的なステップを紹介する。 閉じる

学位を持たない採用者のほうが、学位保持者より定着率が高い

 スキルに基づく採用の論理に、異論の余地はない。優秀な人材はいつでも不足しており、労働力の多様化も遅々として進まない。したがって採用する際には、できるだけ広く網を張るのが理にかなっている。そこで多くの企業が取ったのは、求人で学位要件を撤廃するというわかりやすい手段だった。2023年の米国勢調査局の報告書によると、学位要件があると約3分の2の労働者が検討対象から除外され、とりわけアフリカ系とヒスパニック系の労働者に影響が及ぶという。

 これに気づいた多くのCEOが、いまや求人票から学位要件を取り除くようになった。とはいえ、筆者らの最近の調査結果を見ると、求人広告の内容と雇用者の実際の行動には大きな隔たりがある。過去10年間で、かつてあった学位要件を撤廃した求人の数は4倍に増えた。ところが、こうした求人のうち、学位を持たない候補者が実際に採用されたのは、100件につき4人に満たない。

 これは悪意に起因する問題ではない。企業が方針を変更したのは、学位要件を撤廃すれば、資質のある多様な候補者の新たな供給源にアクセスできると、心から期待したからにほかならない。

 問題は、ほとんどの企業がこれまでしてきたこと(深く検討せずに不要な学位を要求する)をやめれば変化できると考えている点である。変化に必要なのはむしろ、これまでとは違う何か(すなわち、より広く公平な採用を推進する新しい慣行)を始めることなのだ。

 よくあることだが、ビジネスの世界では、規制当局が不正行為を抑制しようとすると、あの手この手で新しいルールをすり抜ける企業が出てくる。スキルに基づく採用も同じことで、エグゼクティブが採用方針を改革しても、多くの採用担当マネジャーはどうにかしてこれまで通りの考え方や行動を継続しようとする。

 これまでの方法をなかなか変えられないのは、驚くことではない。採用の候補者が新しい職務で活躍するかどうかは、保証しようがないからだ。有効な選別手段がないがゆえに採用担当マネジャーは、新しい職務を学習し成長する能力に代わるものとして、また応募者プールをたやすく選別する手段として、学部卒という資格に依拠するようになるのである。

 今日において、医療および情報関係の職では、学位要件のあるケースが比較的少ない。それは、これらの業界には、学位の代わりとして認められる、明確で確立された認定資格があるからだ。CompTIA Security+の資格を持つ候補者にはサイバーセキュリティの基本的知識があり、CISSP資格の取得者にはさらに高度な知識があることを、採用担当マネジャーは知っている。これらの業界では、採用の決定に当たって、学部卒であることを根拠とする推量ではなく、こうした認定資格に依拠できることが多い。

 しかし、ほとんどの職業にはそうした認定資格がない。候補者のスキルを評価する実用的な手引きがないので、多くの採用担当マネジャーは実際の求人広告の要件にかかわらず、応募者を選り分け、最終選考に残った候補者を判別する便利な手段として、学位の取得有無を利用し続けることになる。