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自分が主張したいことばかりを話していないか
セールスの仕事をする人は、巧みにストーリーを語る必要がある。相手が見込み客であろうと、パートナーや商品の流通業者であろうと、その点は変わらない。たとえば食料品店の場合、棚のスペースは限られている。その中であなたは、自社商品を棚の目立つ場所に置けばすべての人に大きな利益があると、小売業者を説得する必要がある。同じように商談では、あなたの商品には投資する価値があることを見込み客に確信させなければならない。どちらの状況でも相当な説得力が要求され、心に訴えかけるストーリーを語ることが不可欠だ。
本稿執筆者の一人であり、ノースウェスタン大学ケロッグスクール・オブ・マネジメントで特任助教授を務めているジーナ・フォングは、消費者人類学の研究者として、顧客のストーリーを発見して共有し、顧客の求める商品や経験をつくり出せるようクライアントを支援している。もう一人の執筆者、エスター・チョイはリーダーシップ・ストーリー・ラボの創設者であり、ビジネスを成功させるためのストーリーテリングの技術をビジネスリーダーにコーチしている。つまり筆者らは2人とも、ストーリーテリングを仕事の要として活用しているのである。
筆者らはこれまでの経験から、特にセールスにおける「説得力のあるストーリー」とは、なぜその商品やサービスが相手のニーズを満たしているかを説明すること、すなわちナラティブであると学んだ。それは耳を傾けること、感情的なつながりをつくること、顧客の視点で考えることを伴う。このようなコミュニケーションの方法を早い段階で習得すれば、セールスパーソンとして早く成長できるだろう。その第一歩は、この業界の初心者が陥りやすい、よくある誤りを避けることである。
やってはいけないこと
筆者らのクライアントである食品飲料メーカーは、自社のドリンクを棚のさらに目立つ位置に置くようスーパーマーケットチェーンを説得したいと思っていた。そこでセールスチームは最新式の生産工程についてのストーリーを語った。それが商品の最大のセールスポイントだと考えたからだ。そして、このドリンクをよく目立つ場所に置けば、売上げが向上して流通量を増やせるようになり、やがて販売価格が下がって、この上質な商品がさらに手の届きやすいものになると説明した。