海外駐在員が現地従業員に抱きがちな5つの誤ったイメージ
Juan Moyano/Stocksy
サマリー:海外駐在員の業績に大きな影響を与える現地国籍の人材(HCN)の重要性は、グローバル企業において軽視されがちだ。現地子会社で働く彼らは、グローバル展開する企業の業績向上に不可欠な存在である。それにもかかわ... もっと見るらず、本社や駐在員の多くは、彼らの役割と価値を正しく理解できていない。そこで本稿では、HCNに対する5つの誤解を明らかにし、それらを解消する方法を探る。 閉じる

現地法人を成功に導く「現地人材」が軽視されている

 海外勤務は緊張に包まれている。そこで業績を上げれば、多国籍企業でのキャリアアップの足がかりになる。失敗すれば、本人と家族が大きなダメージを受ける。海外駐在員が高い業績を上げたり不振に陥ったりするのにはさまざまな要因があるが、多くの人が認めたがらない、あるいは気づこうともしない要諦がある。それは、海外駐在勤務において現地国籍の人材が果たす役割である。

 現地国籍人材(Host-Country Nationals, 以下HCN)とは、多国籍企業の現地子会社で働く従業員のことである。彼らは駐在員と関わり合い、企業のグローバルモビリティ(国際人事異動)の方針や取り組みからさまざまな影響を受ける。

 HCNはグローバルモビリティにおいて不可欠な存在であるにもかかわらず、正しく理解されていない。一般的に駐在員は、企業にとって極めて重要で困難、かつ厄介なミッションに取り組むヒーローと見なされるが、HCNはほとんど注目されることなく駐在員の陰に隠れている。断片化したグローバリゼーション、コロナ禍、地政学の先行き不透明な状況によって駐在員の全体数は減少し、その結果、多国籍企業の業績におけるHCNの重要性は増している。にもかかわらず、HCNは依然としてその功績をほとんど認められていないのである。

 この不均衡は研究の領域にまで及んでいる。HCNは世界の多国籍企業の労働力の80%以上を占め、現地子会社で中核的な機能を担っているにもかかわらず、HCNに関する研究は、駐在員に関する研究50件につきわずか1件しかない。この不均衡の是正は、筆者らの研究の目指すところであり、本来ならばすでに成されているべきことでもある。

 HCNはほとんど注意を払われていないため、多くの人々はHCNが果たす役割や多国籍企業のために創造している価値について誤ったイメージを抱いている。以下では、筆者らの研究に基づいて、HCNに対する5つの虚像と、それらを払拭する方法について述べたい。

1. HCNは駐在員の赴任について、駐在員と同じぐらい熱意を持っている

 駐在員は海外勤務の準備をする高揚感の中で、誰もが自分と同じ境遇にはいないことを忘れがちだ。HCNはこれまでに、さまざまなレベルの能力や業績の駐在員が来ては去るのを多く見てきた。したがって、「また別の外国人」が赴任して比較的短期間、滞在することにあまり関心がなかったり、懐疑的だったり、疲れていたりする。憤慨していることすらある。そうなるのも不思議ではない。HCNは本社からのサポートがほとんど、あるいはまったくないまま、こうしたフラストレーションに対処しようとしている。その結果、駐在員との接触を避けたり、交流から遠ざかったり、駐在員の計画を積極的に妨害したりするといった非生産的な行動に出ることがある。