なぜ人は、退屈な仕事を面倒な方法でやろうとするのか
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サマリー:人は一度学習した方法を必要以上に使い続け、さらに楽しい方法があっても切り替えられないことがある。たとえば、PCを使ったほうが楽にもかかわらず、長文メールを携帯電話で打ったり、散歩をする代わりに面白くない... もっと見るテレビを見続けてしまったりといった経験をしたことはないだろうか。研究によれば、この「固定化」という状態の度合いは、反復と継続によって増すという。本稿では、人が固定化されてしまう原因とともに、それを防ぐ方法を解説する。 閉じる

退屈な仕事を続けるほうが楽に感じてしまうメカニズム

 私たちは気がつくと、つまらない仕事に没頭していることがある。そして、つまらない仕事を長く続ければ続けるほど、やめられなくなるのだ。同じ目的を果たせる、さらに楽しい方法に切り替えるチャンスがあっても、やり続けてしまう。身に覚えがあるだろう。そばにあるPCを使えば楽なのに、わざわざ大変な思いをして携帯電話で長文メールを打ったり、文書を自動的にフォーマット化してくれる手軽なソフトがあるのに、手作業で書式を整えたりする。空き時間が1時間できた時に、外へ散歩に出れば気持ちがよいのに、面白くもないテレビ番組を見て過ごしてしまうのだ。

 みずから好んで、最適でないやり方に固執する人はいないが、私たちがそうしてしまう理由が、研究によって明らかになってきた。人は、一度学習した方法を、さらに革新的なやり方があるにもかかわらず、その後の問題に適用しようとして「使いすぎて」しまうのだ。一度習得した方法が真っ先に頭に浮かぶようになり、ほかの方法を検討することが妨げられる。専門家が時に、型破りな発想を苦手とする理由の一つがこれである。

 客観的に見れば、目的を果たすために、さらに楽しい方法が選べるのなら、そのチャンスをつかむべきだろう。誰だって好きなことに時間を使い、楽しく効率的に目的を果たしたいと思っている。マネジャーも、部下にそうしてほしいと望んでいる。幸せな従業員ほど生産性が高いからだ。多くの企業が健康で幸せな労働力を持つことの利点に気づき、その可能性を高めるようなワークプレイスを設計している。