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部下が発言しない理由を本当に理解しているか
ジム(仮名)は、自分のことを「近づきやすいリーダー」だと思っていた。プライドが高いタイプではないし、自分とは異なる視点への関心も持っていた。それに、チームのメンバーには、堂々と意見を述べてほしいとはっきり伝えているつもりだった。実際、部下には繰り返しこう話していた。「現状がどうなっているか教えてください。そうすれば、早い段階で軌道修正できます」。ところが、1on1の話し合いでも、チームのミーティングでも、誰もが沈黙したままだった。
やがて、ジムはほかの部署の同僚たちの言葉を通じて、間接的に部下たちの思いを知った。部下たちは、ジムが設定した業務スケジュールが現実離れしており、自分たちへのサポートも十分ではないと感じているとのことだった。会社が実施した360度評価によると、この問題の一端はジムにあった。リーダーとして備えるべきさまざまな能力の中でも、部下の「心理的安全性をつくり出す」能力が最低の評価だったのである。
ジムが、そしてほかの多くのリーダーたちが誤解していることがある。なぜ部下が口を閉ざしたままなのかという理由を理解しようとせずに、ただ単に「もっと声を上げてほしい」と促しても、誰のためにもならないのだ。こうしたやり方では、期待しているようなフィードバックも得られない。
それよりもリーダーは、メンバーたちが自分の意見を述べることを妨げている要因──個人レベルの要因とシステム全体に関わる要因の両方がありうる──を検討すべきだ。ブレインストーミングで異なる視点を示すことにせよ、会社の戦略上の方向性について疑念を述べることにせよ、部下が言葉を発しない理由は、どこにあるのか。
それは、何も言わないことを相手への敬意の表現と見なす文化や、上司と部下の力関係が原因の場合もあるだろう。また、職場で沈黙することが生き残りのための戦略であるケースも少なくない。