リモートワークが女性に与える影響は、若手とシニアレベルで異なる
HBR Staff/AnnaStills/Getty Images
サマリー:パンデミック以降、在宅勤務(WFH)は女性の仕事と家庭の両立を支援するとされてきたが、それぞれのキャリアの段階によってその影響は異なる。筆者らは、WFHが若手女性のキャリアの足がかりやシニア女性のメンタリン... もっと見るグに与える影響を調査した。その結果、若手にとってリモートワークはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を損なう可能性がある一方、シニアレベルの労働者は、リモートワークによって生産性が高まることがわかった。 閉じる

1055人を対象に在宅勤務の影響を調査

 パンデミックが始まって以来、在宅勤務(WFH)は職場で働く女性を支援する手段として時に喧伝されてきた。この議論は女性が仕事と家庭の両立を支援するために、WFHに可能性があるとして焦点を当てることが多い。しかし、WFHが女性の専門性の向上に与える影響は、キャリアによって異なる可能性がある。筆者らの研究では、WFHがキャリアの足がかりを得ようとする若手の女性にどのような影響を与えるのか、また、シニアレベルの女性が行う、目に見えないことの多いメンタリングの仕事にどのような影響を与えるのかを探った。

 研究では、WFHが女性のキャリアに与える影響を、あるフォーチュン500のソフトウェアエンジニア1055人を対象に調査した。この会社では、新型コロナウイルスのパンデミック前は、チームメート全員と同じビルで働くエンジニアもいれば、数ブロック離れたビルに分かれて働くチームもいた。オフィスの閉鎖前は、同じビルにいたチームは頻繁に対面の交流をしていた。対照的に、ビルが分かれていたチームは、日々のミーティングをオンラインで行うなど、リモートチームのように機能していた。パンデミックでオフィスが閉鎖されると、すべての従業員がチームメートと離れた場所で働くようになった。

 WFHがさまざまなレベルの女性の専門能力の向上に与える影響を評価するため、まず、オフィスが開いていた時に一部の同僚と離れた場所にいたエンジニアが、同じ場所にいるチームのエンジニアと異なる経験をしたかどうかを評価した。次に、オフィスが閉鎖され、チームメートの近くにいたエンジニアがそれまで享受していた同僚との近接性を失うと、こうした違いがなくなるのかどうかを評価した。

WFHでメンターシップが損なわれる

 研究から、チームメートの近くにいるとメンターシップが促進されることがわかった。筆者らは、エンジニアのソフトウェアプログラムの改善を目的としたオンラインピアレビューのコメントを通じて、メンターシップを評価した。オフィスが開いていた時に同僚の近くで仕事をした女性エンジニアは、複数のビルに分かれたチームにいた女性よりも、コードに対するコメントを40%多く受け取った。これは一つには、女性エンジニアが同僚の近くにいた時は、オンラインでフォローアップの質問をより多くし、コードについてより深い会話をしたためだ。さらに、女性エンジニアは対面の場合、より多くの人々からフィードバックを受けており、これは自分の仕事についてより多様な視点を得ていることを示唆している。興味深いことに、このフィードバックは、男性と女性の両方の同僚から得られた。したがって、女性エンジニアが対面で仕事をしている時は、男性から見下されるような「マンスプレイニング」を多く経験するということでもなければ、他の女性の管理下に置かれるというわけでもない。