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地位が高くなると、自分も周囲の人も変わる
あなたの地位が高くなればなるほど、あなたのジョークはどんどん面白くなる──このような古いことわざがある。高い地位にある人がジョークを言えば、周りのみんなに笑ってもらえる、というのである。しかし、笑い事で済まないのは、権力を持つと人間が変わるという点だ。権力は、あなたの認識と判断、そして行動を変えてしまう。
あまり理解されていないのは、権力が権力を獲得した当人を変えるだけでなく、周りの人たちも変えてしまう点だ。権力を持っている人は、ほかの人たちの期待と投影の対象になる。権力を手にすると、あなたは一人の人間というよりも、権威の象徴と見なされるようになる。周囲の人たちは、あなたのアイデアを過大評価し、その一方で、それ以外の人たちのアイデアを過小評価するようになってしまう。
また、あなたに対するフィードバックは、以前ほど率直なものではなくなり、正確さも欠くようになる。あなたの部下たちは、声を上げることに腰が引け、自分の認識をあまり信用しなくなり、リスクを取ることに消極的になる。そして、もしあなたが不適切な行動を取ったとしても目をつぶるようになるかもしれない。周りの人たちは、あなたができることについて、現実離れした大きな期待を抱く場合もある。あるいは逆に、あなたのことを懐疑的な目で見て、立派な肩書きにふさわしい実力を持っているのかお手並み拝見という発想をするかもしれない。
こうした現象は、どのような結果をもたらすのか。周囲の人たちがあなたの権力にどのように接するかにより、あなたは自分でも気づかないうちに変わっていく。この力学を認識していないと、権力が生み出す罠にはまり、組織のために正しい行動を取り、自分自身の目的を達する能力が損なわれかねない。研究によると、リーダーが上手に権力を使えていないと、フォロワーのモチベーションが低下し、組織のために最大限貢献しようという意志も弱まることがわかっている。
本稿では、筆者らがエグゼクティブコーチとして目の当たりにしてきた権力の罠を5つ取り上げて論じる。あらゆる階層のリーダーがその罠にはまる危険があるが、リーダーになってからの期間が長ければ長いほど、それらの罠は手ごわいものになり、危険性も大きくなる可能性がある。
周囲の人たちがあなたに対してどのような態度を取るかは、あなたがコントロールできるものではないが、自分自身の振る舞いはコントロールできるし、権力がもたらす負の影響を和らげるための戦略を実践することもできる。権力は、自分にとって好ましい形で用いるべきだ。権力がみずからに悪い影響を及ぼす状況を避けなくてはならない。
救世主の罠
権威のある人だと見なされると、頻繁にアドバイスをしたり、すべての問題の正解を知っているかのように振る舞ったり、過度におせっかいをしたりするという罠にはまりかねない。このパターンに陥ったリーダーは、あらゆる試練に対して自分があたかも救世主であるかのように行動する結果、チームの面々から力を奪ってしまう場合がある。あるいは、いろいろなことに首を突っ込みすぎて、自分の専門分野以外の問題にも片っ端から関わろうとする可能性もある。