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スターバックスのような成功した企業が陥りやすい問題
米スターバックスがまたもやトラブルに見舞われている。2024年1~3月期決算は、既存店売上高が前年同期比4%減となるなど、予想を下回る内容だった(同社にとって世界で2番目に大きな市場である中国では11%減)。これを受けて、同社の株価は急落し、現在も52週高値を大幅に割り込んでいる。事実上の創業者で、3度にわたりCEOを務めたハワード・シュルツは、現経営幹部に中核的なパーパス、すなわち存在理由を再発見して、それを大切にするよう呼びかける公開書簡をリンクトインに投稿した。
シュルツは2月にも公開書簡を発表しているが、今回は総じて、長年の顧客の気持ちを反映した内容だった。いわく、かつてのスターバックスに行く時の特別感は失われ、ブランドの意味も昔と変わってしまったという。根本的な問題は、スターバックスがみずからをコモディティ化(一般化)してしまったことだ。
本稿では、同社が対面でのエクスペリエンスに焦点を戻すべきであることを主張し、その方法を提案する。スターバックスが抱える問題は、かつて顧客に卓越したエクスペリエンスを提供することにより成功した企業が、効率や売上高といった目標を達成する誘惑に負けて、その過程で自社をコモディティ化してしまう格好の例だ。筆者らの勧告は、進むべき道に迷った企業が、どのようにすれば元の軌道に戻れるかを明らかにする。
自己コモディティー化
シュルツがスターバックスについて長年使ってきた「サードプレイス」という言葉(社会学者レイ・オルデンバーグの造語)は、「家でも職場でもなく、人々が集まり、リラックスし、会話を楽しめる場所」を意味する。だが、この10年で、ほとんどの店からは、ゆったりした大型の椅子は姿を消し、代わりにゴツゴツした木のイスが置かれるようになった。顧客を自宅や会社に追い出しやすいタイプの椅子だ。さらに、コンピューターやスマホにつなげる電源を、宝探し並みにわかりにくい場所に隠した。