
coolbiere photograph/Getty Images
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
サマリー:かつて汚染物質の一つと見なされていたコールタールは、染料の原料になることがわかると再利用され、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実例となった。現在も多くの企業がこの経済モデルに取り組み、廃棄物を資... もっと見る源として活用している。これは大企業に限ったことではなく、中小企業も廃棄物を再利用することでコスト削減や新たな収益の獲得につなげられる。本稿では、中小企業がサーキュラーエコノミーを構築するための最初の一歩をどのように踏み出すべきか、解説する。 閉じる
コールタールは汚染物質から産業の源泉に
19世紀のロンドンでは、テムズ川がひどく汚染されていた。未処理の汚水によってコレラや腸チフスが発生し、何千人もの命が奪われた。コールタールも川に流されていた。「1858年の大悪臭」を引き起こした汚水の強烈な臭いを機に造られたのが、現在も使用されている下水設備だ。コールタールについては、蒸留すると合成染料の原料になる成分が得られることが発見され、企業は川への投棄をやめ、貴重な染料化合物に再利用するようになった。
コールタールが汚染物質から60億ドル規模の産業の源泉になるまでのストーリーは、「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)の強力な実例であり、企業が取り入れるべき説得力のある事例だ。その必要性は計り知れない。世界全体では、汚水や産業廃棄物、農業廃棄物が毎日推定200万トン以上世界の水路に排出されている。発展途上国では、産業廃棄物の70%が未処理のまま水域に投棄され、水源を汚染している。
多くの大企業がサーキュラーエコノミーに取り組んでいるが、中小企業にもできることがある。本稿では、その方法を紹介する。
廃棄物を富に変える
サーキュラーエコノミーは、従来の直線的な「取る─つくる─捨てる」のモデルから脱却し、製品や素材を使い続けるということだ。中小企業にとって、このような発想の転換は、初めは困難に思えるかもしれない。多くの中小企業は、すでに低い利益率、限られた資源、複雑なサプライチェーンという問題を抱えているからだ。