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『ワシントン・ポスト』紙の新トップが陥った苦境
新聞社が記事になる時は、よい話であったためしがない。
いまの『ワシントン・ポスト』紙もしかりである。同紙の新CEOウィル・ルイスがかつて責任ある立場にあった英国の報道機関で、大きな独占記事を入手するために、不適切な手段(情報への対価の提供など『ワシントン・ポスト』紙を含む米国の主要新聞社の倫理規定で禁じられているものを含む)を講じていたことが暴露されたのだ。
さらに、ルイスが『ワシントン・ポスト』紙の新編集長に指名した元同僚のロバート・ウィネットも、倫理上の一線を越えていたことが明らかになり、ウィネットはオファーを辞退した。そして現在、注目は同紙の億万長者のオーナー、ジェフ・ベゾスに移っている。彼はルイスを守り続けるだろうか、それとも何らかの決断を下すだろうか。
ルイスの置かれた状況は特殊だが、その苦境は、外部から迎えたリーダーが厳しい、あるいは物議を醸すスタートを切った場合にどうなるかを考える、よいケーススタディとなる。本稿では、『ワシントン・ポスト』紙の一件からリーダーと彼らを選任する側が学ぶべき3つの教訓を取り上げ、取締役会や新任リーダーが同様の状況に陥った場合の具体的なアドバイスを提供したい。
教訓1:報道機関のような職場が増えている
報道機関は類い稀な場所である。競合他社のCEO、あるいは自社のCEOの内情をこれほど公然と積極的に探るような業界がほかにあるだろうか。また、著名な社員が新任の上司を公然と批判するような業界もそうそうないだろう。『ワシントン・ポスト』紙で47年のキャリアを持つデイビッド・マラニスは、フェイスブック上でこう批判した。「私は『ワシントン・ポスト』紙で、トップと次期編集長になる人物が現状のままでよいと思っている人を一人も知らない」
ジャーナリストは、「権力者に真実を突きつける」ように教えられているため、報道チームは、陰の取締役会のような役割を果たしうる。自分たちに対する扱いや上司のやり方が気に入らなければ、嫌というほど不満を訴えて、編集長が「報道チームの信頼を失いつつある」とトップを不安にさせるだろう。