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新鮮だった取り組みがルーチン化してしまったら
医療を含むさまざまな場面において、イノベーションは絶え間なく追求すべきものである。だが、有望で革新的なプロセス(作業手順)が期待通りの成果を上げていない場合、あるいは、かつては新鮮だったイノベーションが長い年月を経て力をなくし、効果的ではなくなっている場合、組織は何をすべきだろうか。
一つの解決策は再実装である。すなわち、革新的なプロセスを組織の文脈で考え直し、必要な変更を加えてから、再導入するのである。アリアドネ・ラボ(ハーバード大学T. H. チャン公衆衛生大学院とブリガム・アンド・ウィメンズ病院の医療システム・イノベーション共同センター)のチームは、シンガポール総合病院(SGH)の再実装の取り組みを支援して成果を上げた。問題となったプロセスは、手術安全チェックリストの適用である。筆者ら3人はこの取り組みに参加した。そこで学んだことを本稿で共有したい。
パフォーマンスの低下
SGHの手術安全チェックリストは、手術室で使用されるほとんどのチェックリストと同様、「世界保健機関(WHO)手術安全チェックリスト」の採用が世界中に広まる中で制定された。このチェックリストは2009年に最初に導入され、術後合併症を減らすためのコミュニケーションツールとなってきた。当初、このチェックリストは安全性の向上において重要な役割を果たし、米国の公衆衛生学者で外科医のアトゥール・ガワンデはこれに触発されて、ベストセラー『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』を著した。だが時を経て、チェックリストを採用したSGHをはじめとする多くの病院ではパフォーマンスが低下し、潜在的メリットが完全に失われるおそれがあった。