「生成AI先生」が人間の学習に悪影響といえる3つの理由
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サマリー:チャットGPTをはじめとした生成AIの登場は、教育の世界でも救世主としてもてはやされている。しかし、人間の認知に関する長年の学術研究によると、生成AIはあらゆるレベルの学習に悪影響を及ぼす可能性があるという... もっと見る。本稿では、その3つの理由を紹介し、新たなテクノロジーを採用する際に考慮すべきリスクについて考える。 閉じる

生成AIがあらゆる学習に悪影響を及ぼす可能性

 チャットGPT-4のリリースは広く評価され、以来、生成AIは教育の救世主として多くの人にもてはやされている。その好例として、英国の教育専門家アンソニー・セルドン卿は、2027年までに世界規模でAIが人間の教師に取って代わると予測している。

 残念ながら、人間の認知に関する40年以上にわたる学術研究は、生成AIがオンライン指導から社員研修まで、あらゆるレベルの学習に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している。その理由は3つある。

問題1:共感性

 ビル・ゲイツから教育者のサルマン・カーンまで、大物知識人たちは、チャットGPTなどの大規模言語モデルに基づく生成AIツールによって可能になる個別指導が、教育全体の学力格差を縮めると主張している。しかし、個別指導は学習の最も重要な推進力ではない。教育研究者のジョン・ハッティは、何千もの研究データを分析した結果、強く共感できる学習者と教師の関係は、個別化することよりも学習に2.5倍のインパクトを与えると最近発表した。

 共感の基盤となるのが、オキシトシンというホルモンだ。2人の人間がつながり、同時にオキシトシンを放出すると、両者の脳の活動が同期し始める。これは「ニューロン結合」というプロセスで、互いに学び合うだけでなく、文字通り同じように考えるようになる。アルゴリズムには脳もオキシトシンもないことを考えると、人間とAIが共感関係を築くことは生物学的に不可能だ。共感という超個人的な性質が、デジタル領域における共感の出現を妨げているのである。

 完全なデジタル環境で学ぶ生徒の成績が、対面で学ぶ生徒の成績よりも低く、卒業する可能性が著しく低い主な理由の一つがそれだ。共感がなければ、学生は情報の受動的な受け手となり、学習プロセスに付き物の葛藤を押しのけて進む原動力をほとんど持たない。

 高度に熟練した「人間の」教育者であっても、共感的な関係を築くことができなければ必然的に学習の妨げになる。そしてこのことは、AIに対するさらなる警告となる。知識も教育理論(おそらくデジタル教師の強みだ)も、効果的な教育には不十分であることを示しているからだ。