高齢のリーダーが一律に退くべきだという意見の危うさ
HBR Staff/Dimitri Otis/belterz/Sergey Ryumin; Unsplash
サマリー:2024年の米国大統領選で、バイデン大統領(81歳)とトランプ前大統領(78歳)の高齢に対する懸念が高まったことを通じて、リーダーの年齢問題に関心が集まっている。しかし、年齢に基づいてリーダーを評価することは... もっと見る不適切であり、高齢だからといって一律に退任を求めるべきではない。リーダーの資質は、暦年齢ではなく、個々の能力や健康状態をもとに判断すべきである。 閉じる

年齢差別は「差別の最後のフロンティア」

 2024年11月の米国大統領選に向けた第1回テレビ討論会(6月28日)でジョー・バイデン大統領が冴えないパフォーマンスを見せた後、バイデンの年齢問題への関心が一挙に高まった。このことは、アメリカ合衆国大統領という役職の重要性を考えれば驚くことではない。

 バイデン大統領(81歳)、そして対立候補であるドナルド・トランプ前大統領(78歳)の肉体的・認知的な健康状態についての懸念が広がり、人々は疑問を抱き始めた。バイデンとトランプは、国のリーダーを務めるには高齢すぎないか。2人の認知能力に問題はないのか。2人は大統領の役割を果たす能力を欠いてはいないか。

 バイデンとトランプという特定の個人に関する問題については、ほかの論者に任せたい(訳注:本記事英語版の掲載後、バイデンは大統領選からの撤退を表明。59歳のカマラ・ハリス副大統領が民主党大統領候補として大統領選に臨むことになった)。しかし、米国大統領選をめぐって持ち上がった一連の議論は、政治およびビジネスにおけるリーダーの年齢問題、そしてリーダーの継承全般について、あらためて検討するきっかけをつくった。リーダーの継承プロセスは、周囲のステークホルダーが推し進める場合もあれば、リーダー自身が先頭に立って行う場合もあるだろう。

 リーダーの交代と継承に関して計画を立てておくことは、どのような組織でも重要課題と位置づけられるべきだ。リーダーの健康と活力の程度を検討することは、その人物が現在何歳かに関係なく必要であり、妥当でもある。リーダーの仕事ぶりによって影響を受ける人たちは、自分たちのリーダーが最も高いレベルで活動できるだけの資質を持っていると安心したいのが当然だ。その点は、リーダーが75歳だろうと、45歳だろうと変わらない。

 問題は、高齢のリーダーに関して、その人物にそうした役割が務まるのか、とりわけ退任すべき時期に来ているのではないかという議論が持ち上がる時、その人物のスキルや能力、生産性ではなく、まず暦年齢に関心が払われやすいということだ。

 どうして、同じ年齢の人たちすべてが同時に一線を退くべきだと決めつける必要があるのか。年齢別の健康上のリスクに関する統計は、一人ひとりの健康状態を明らかにするものではない。ところが、個人のリーダーとしての資質を評価しようとする際は、年齢別の一般的な傾向に基づいて考えるケースがあまりに多い。

 しかし、そのような発想が間違っていることは、私たちはよく知っているはずだ。