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気づかぬうちに心理的安全性が損なわれた時の大きな代償
製造オペレーションチームの新しいメンバーであるエレナは、安全性に関して改善できそうな部分を見つけた。チームにどう伝えようかと考えをめぐらせたが、彼女は声を挙げることに不安を感じていた。
なぜか。自分の新しい上司であるラヤに対し、警戒心を抱いている。同僚たちと出だしからすれ違いを起こしたくない。そして、チームの監督下にある複数の工場のすべてで自分の案が奏功するかどうか、確信がない。
チームの今週の定例ズーム会議は、議題が詰まっていて、慌ただしく感じられた。だが終わり際にラヤは、ほかに何か気になる点があるか尋ね、さらにはエレナに近況を尋ねた。そこで、彼女は話してみることにした。
ところが、エレナの口からは計画通りに言葉が出てこない。ラヤは怒っているように見え、チームメンバーたちは次の会議に参加するために退出し始めた。ラヤは「賛成できるかわからないけれど、もう少し話し合いましょう」と簡潔に言った。
会議は正式に終了した。エレナは何も映らない画面を見つめたまま、やきもきしながら自分を責め、もう二度とこのようなことはしないと誓い、「ラヤは近寄りがたい存在だ」という印象を強く心に残した。そして「これからは黙っているのが最善策だ」という、今後の彼女のキャリアに影響するであろう思い込みを強くした。
ラヤは忙しく、このやり取りを忘れてしまったため、エレナとの話し合いを実行しなかった。やがてラヤは、エレナは会議でもっと積極的に主張すべきだと考えるようになった。あまり発言せず、口を開く時はためらいがちに見える。これは意外であった。彼女が面接した時のエレナは、間違いなく率直だった。
エレナの案に対する自分の反応が、「会議で率直に話すことは、二度と繰り返してはならない過ちだ」という彼女の思い込みを固定化させてしまったことに、ラヤはまったく気づいていなかったのである。
率直に話すことの重要性
組織において、率直に意見を述べること、そして耳を傾けてもらうことは極めて重要だ。何が語られ、何が語られないのかは、倫理的行動やイノベーション、インクルージョン、パフォーマンスを方向づけることが、筆者であるライツとエドモンドソンやほかの研究者らの研究で示されている。