人事部は変革の先頭に立たなければならない

 第2次世界大戦から1980年まで、人事部の役割は従業員を支援することだった。これは、労働組合を会社から退けるための手段として始まったものだ。その後、人材育成がすべて社内で行われるようになってからは、従業員の成長を管理することが人事部の目的となっていた。

 そこに、変化の兆しが現れた。1970年代のスタグフレーションと1980年代初頭のリセッション(景気後退)、さらにその後の世界金融危機を受けて、人事部の焦点は容赦のないコスト削減に移っていった。何十年もの間、労働市場が停滞し、人々が安易に離職できなくなったことも人件費の削減を容易にした。賃金に加えて、教育や能力開発などを含めたあらゆる種類の福利厚生が削減された。仕事に対する要求は厳しくなる一方で、雇用の不安定さが増していった。

 いま、この振り子が大きく逆方向に揺れている。米国の失業率は過去5年間、コロナ禍によるロックダウンの期間を除いては、4%未満を維持している。生産性の伸びは鈍く、2010年代の10年間は近代において最低となった。これに加え、労働人口の伸びも鈍化していることから、しばらく労働市場は逼迫する状況が続くだろう。