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AIが人間の「知識」をサポートする世界では「知恵」が重要になる
いままさに、職場において相反するような2つの大規模な人口動態の変化が進んでいる。私たちはみずから進んで、あるいは必要に迫られて、より長く生き、より長く働くようになっている。
20世紀は65歳以上が他の年齢層の5倍の速さで増加し、ベイン・アンド・カンパニーが最近発表した推計によると、2031年までに55歳以上の従業員が世界の労働人口の4分の1を占めるようになる。米国労働統計局によると、2016年から26年にかけて増加する米国の労働力人口のうち、約半分は60歳以上になる。
一方でデジタルインテリジェンス(DQ)への依存が高まっており、企業はデジタルネイティブの採用や昇進に注力している。彼らの大半は、かなり若い世代だ。2014年のハリス・インタラクティブの調査では、米国人の38%は上司が年下だった。近い将来に大半の人が年下の上司の下で働くことになると、労働省は示唆している。
生理学的には、いまの時代の60歳は40歳といえるかもしれないが、現代の職場の権力に関しては、30歳が50歳に相当する。そして、年長の労働者と若い管理職のプールが大きくなるにつれて、チームにおけるエイジダイバーシティの価値を理解する必要性が高まっている。
初めて5つの世代が職場に揃い、世代間で争いが起きるだろうという見方もある。しかし、私はそうは思わない。私は長年にわたり、エアビーアンドビーをはじめスタートアップの創業者のメンターとして、そして世界初の中年期向けの「知恵(ウィズダム)の学校」であるモダン・エルダー・アカデミー(MEA)のCEOとして、世代間の共生関係がいかに企業を成長させるかを観察してきた。ただし、それを実現させるためには、「ナレッジワーク」へのこだわりを超えなければならない。
ナレッジワークという言葉は、1959年に先見性のある経営思想家ピーター・ドラッカーが考え出した。「知識社会における真の投資は、機械や道具にあるのではない。知識労働者(ナレッジワーカー)の知識である」。ドラッカーのこの洞察は、半世紀以上の間、真実であり、並外れた影響力を持ってきたが、こんにちではPCや携帯電話さえあれば誰でも世界中の膨大な知識を自由に使えるようになり、ほんの数年前は人間にしかできなかった知識ベースの仕事をAIが処理でき、その範囲が広がっている。