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必要な時に戦略を立てず、不要な時に戦略を立てていないか
最近、筆者がリンクトインでビジネス戦略について議論したところ、このような嘆きの言葉を述べた人がいた。「残念なことに、私たちが目の当たりにする戦略プランの多くは、『個人レベル』の緊急課題の寄せ集めにすぎません。『組織レベル』で一貫性のある、熟考された設計意図がたいていの場合、欠けています」
この人物は、あらゆる企業にとっての重要課題に光を当てたといえる。それは、戦略立案の領域と戦略実行の領域の違いをどのように見極めるのかという問題だ。ほとんどの企業はこの問いに対して明確な答えを持っていないが、この点の重要性は極めて大きい。現状では、企業は往々にして、必要がない時に戦略プランを立て、逆に、必要な時に戦略プランを立てていない。
企業がこのような失敗を犯す理由は、慌てて行動しようとするあまり、明確でわかりやすい戦略をつくるための時間を十分に割かず、その結果として行動計画の指針が得られないことにある。そして、企業がこの落とし穴に落ちるのは、シンプルな戦略をつくることの難しさをよく理解していないことが原因だ。
スティーブ・ジョブズは以前、こう語ったことがある。「時に、シンプルであることは複雑であることより難しい。それでも、シンプルを追求することには価値がある。それを達成できれば、大きな山をも動かせるからだ」
どのように戦略を立案すればよいのかについて、唯一の正解はない。そのような方法が本当にあるのなら、いま頃は誰もがその方法を知っているはずだ。しかし、唯一の正解は存在しなくても、有効な戦略を立案するためのヒントはいくつか示すことができる。
部署単位の戦略をつくろうとしない
クライブは、「実直清掃社」(仮名)という会社のCEOだ。この会社は、法人向けの清掃機器・部品の販売と清掃サービスの提供を行っている。筆者は、同社の上級幹部向けの戦略立案・業績評価ワークショップを行うことになり、その準備として会社の資料を調べてみた。
驚かされたのは、この会社が立てている「戦略プラン」の数の多さだった。マーケティング部門、人事部門、IT部門に、それぞれ戦略プランがあった(こうしたことはビジネスの世界において珍しいことではない。というより、それを提唱しているコンサルタントたちもいる)。