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AI営業アシスタントの価値を引き出すために企業が取り組むべきこと
ある営業担当者が、重要な顧客とのミーティングの準備をしている。会社の目標と営業哲学に沿って調整されたAI搭載コーチングツールを使って、ピッチのリハーサルをする。そのシステムは、営業担当者の口調、言葉選び、ペースを分析して、改善点を指摘する。たとえば、コラボレーションを強調する表現を入れることを提案したり(「これを一緒に探りましょう……」)、次回のミーティング設定をリマインドしたりといった具合だ。さらに、顧客のニーズや好みについて、データに基づくインサイト(たとえば、営業活動やクロスセルの機会に関する助言など)も教えてくれる。
営業コーチとしてAIが果たすべき役割は、強力かつ新たな可能性を秘めている。アナリストとして求められる役割も急速に高まっている。膨大な営業データを掘り下げて、特定の地域の営業成績が振るわない理由や、最新の市場動向といったインサイトを明らかにする。以前なら営業アナリストが何日も、あるいは何週間もかけてやっていた作業を、AIは即座にこなすことができる。
営業コーチや営業アナリストとして機能するAIアシスタントは、すでに幅広く使用されているAI戦術アドバイザーを補完する存在だ。このようなツールは、営業担当者が有望なリードを見つけ、顧客の心をつかむピッチ作成し、提案を設計するのを助ける。それは顧客エンゲージメントを強化し、コンバージョン率(CVR)を高め、売上げを増やし、顧客を維持する力を強化する。
AI営業アシスタントの価値を引き出すためには、複雑な問題(かなりの初期費用やデータ統合、データのクオリティ問題、企業コンテンツを使ったAI学習、そして営業チームにおける採用推進など)をクリアする必要があるため、投資利益率(ROI)の達成と測定が難しい場合がある。本稿は、既存のAI営業アシスタントの能力を調べ、これらのツールの採用、活用の道筋を検討する。
AIアシスタントの能力
AIアシスタントがコーチングや分析、アドバイスを行うためには、分析能力と言語・視覚能力が必要だ。
分析能力
AIの分析能力は、顧客のプロフィールやインタラクション追跡、購入者エンゲージメント、および過去のパフォーマンスデータに基づき、営業チームにインサイトや提案を示す。そして、すべての営業担当者と顧客のデータを活用することにより、各顧客や営業状況にはどのようなアクションが効果的かを提案する。米製薬大手ファイザーや仏電機大手シュナイダーエレクトリック、マイクロソフトなど多くの企業が、こうしたAIの分析能力を活用して、あらかじめ設定しておいた具体的な課題(次善策の提案や顧客離れを防ぐ方法など)について、営業担当者にタイムリーかつ戦術的な助言を与えている。
その結果、顧客対応がスピードアップしたほか、営業活動の生産性が高まった。たとえば、マイクロソフトがAIシステム「デイリー・リコメンダー」(Daily Recommender)を使って、営業担当者に顧客ニーズについてインサイトを与え、営業アクションを提案し始めたところ、営業活動の生産性(顧客との対面時間と商談につながったリードにより測定)が40%も上昇した。