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女性リーダーに対する誤ったステレオタイプ
ジェンダーに関する最も古く根強いステレオタイプの一つに、「女性は感情的すぎる」というものがある。このステレオタイプは、女性のリーダーシップの可能性を損なっている。女性は男性よりも感情に流されやすく、非理性的な判断を下すと考えられているため、リーダーの役割にふさわしくないと見なされるからだ。
筆者らの研究は、「女性のリーダーシップ能力は特に感情に左右されやすい」という一般的な信念に異を唱えるものである。むしろ、筆者らは、激しい感情体験を伴う不確実な時代において、リーダーシップを発揮する際に女性のほうが男性よりも感情に基づいて行動する可能性が低いと予測した。
その理由は、女性が自分よりも他者のニーズを優先するように社会化されているためである。不確実な時代において、女性はみずからが責任を負っている直属の部下などの、周囲の人に配慮する傾向がある。その結果、みずからの感情に従って行動する度合いが低くなる可能性がある。
研究によれば、人が不確実な状況下で主に経験する感情は「不安」と「希望」の2つであり、これらは不安定な環境に対する対極的な反応と見なされることが多い。
筆者らは、新型コロナウイルスのパンデミック初期という極めて不確実な時期におけるリーダーの「不安」と「希望」の経験、およびその後のリーダーシップ行動について調査を行った。
その結果、不安と希望は、環境をどの程度コントロールできるかという認識と関連していることが明らかになった。不安を感じる人は、自分の環境をほとんどコントロールできないと捉えているが、希望を感じる人は、環境をある程度コントロールできると信じやすい傾向がある。
筆者らは、感情は状況に対する各自の評価や解釈の結果であるとする「感情の評価理論」をもとにしている。不安を感じたリーダーは、環境へのコントロールを取り戻す方法の一つとして、部下に対して権力を行使し、身体的暴力ではないが、敵対的な行動を取ることがあり、これは虐待的な指導と見なされることがある。
これに対し、希望を感じているリーダーは、自分にある程度のコントロール権があると認識しているため、コントロールを取り戻そうとする可能性は低く、むしろ部下を支援することで不確実性に対処しようとする。具体的には、希望を強く感じていたリーダーは、仕事以外の面での部下のニーズに応えるなど、「家族支援的な指導」を行うだろうと筆者らは考えている。これは、パンデミックの最中に特に重要なニーズであった。