「無料顧客」の価値は軽視されている

 他の顧客のおかげで無料や少額料金にあずかっている顧客は、ショッピング・モール、不動産仲介業、ITサービス・プロバイダー、オークション会社、印刷媒体やオンライン媒体、求人や出会い系サービスなど、多くの企業にとって大切な存在である。

 ある調査によれば、このビジネスモデルによる売上げが相当部分を占める企業は、世界の主要100社のうち60社に上るという[注1]。また、インターネット上の無料サービスが爆発的に増えているなか、いわゆる「ツーサイド・マーケット[注2]」(複数の異なる収益源を抱えている事業分野)の成長が予想されている。

 このアプローチの理論的根拠は、言うまでもなく、一部の顧客には無料もしくは少額でサービスを提供し、その数がクリティカル・マス(閾値)を超えれば、他の顧客がたくさん集まってきて、その結果、後者による売上げが前者の獲得とサービスにかかるコストを十分上回るというものだ。

 このようなリスクの高いゲームにおいては、まさに無料顧客の真の価値が見えてくる。

 無料顧客が重要であるとわかっていても、つい過小評価しがちである。その理由は2つある。一つは、当然のことながら、売上げの大部分をもたらす顧客を重視してしまうからであり、もう一つは、無料顧客のCLV(顧客生涯価値)を正確に計算する方法がないからである。本稿では、この情報を得るために我々が開発したモデルについて、その利用法と合わせて詳しく説明する。

 無料顧客のCLVを把握することは、次のことを決定するうえで大変重要である。