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なぜ地域住民は
いきなり反対し始めたのか
ボストン大学医学部は2003年、毒性のある生物因子を研究するために、高度なセキュリティを備えた先端研究施設の建設計画を発表した。この研究施設で行われる画期的な研究は、国民の健康のみならず、テロ対策の進歩にも貢献し、エボラ出血熱や野兎病[注1]、炭そ菌、そのほか致命的な病気を引き起こす生物兵器に対抗できるようになると、関係者たちは期待した。
このプロジェクトは当初、国家の安全保障のみならず、バイオテクノロジーのリーダーとしてボストン地区の地位を押し上げ、地域経済にも貢献するに違いないと、広く歓迎された。
しかし突如、風向きが変わる。この国立新興感染症研究所(NEIDL)は、ボストン南部の住宅街サウスエンドとロックスベリーが交わるボストン大学医学部の側に建設される予定であった。住宅地のどまんなかに建てられるこの研究施設でどのようなものが扱われるのか、だんだん明らかになってくると、当初の期待も次第に冷めていった。
安全性は大丈夫なのか。もし何か漏れ出た時にはどうなるのか。テロリストにとって格好の標的ではないのか。ボストン大学が言うように本当に安全なのであれば、ブルックリン、ニュートン、ウェルズリーといった富裕層が住む郊外に建ててはどうか。
地域住民の反発が高まっていったのは、インターネット上の反対活動が大きい。この問題のためだけに立ち上げられたウェブサイト「ストップザバイオラボ」によって、地域住民はほどなく「NEIDL建設断固反対」を唱えるようになった。
保護法財団(CLF)、マサチューセッツ看護協会、ボストン・モビリゼーションなど、もっぱら環境や公衆衛生、社会正義に取り組んでいる有力団体は、それぞれのウェブサイトで反対の声を表明した。