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なぜ人は同じ失敗を繰り返してしまうのか
エネルギー効率をテーマに活動している非営利団体のCEOであるステイシーは、リーダーシップチームを強化するために、COOの役職を新設したいと考えた。しかし、その役職を担わせるために最初に採用した2人はうまくいかなかった。いずれも1年足らずで退職してしまったのだ。採用の失敗は、多くの時間とリソースを浪費するという結果を招いた。
それでも、ステイシーは前に進もうと決意して、人事担当のリーダーであるジョーダンに、COOの採用に向けて動くよう再び指示した。しかし、ジョーダンが選ぶ候補者の質に不安を感じずにはいられなかった。過去の2人がいずれも大失敗に終わったからだ。今回はもっとうまくいくはずだと自信を持つことなど、できるわけがなかった。
筆者はエグゼクティブコーチとして、数年前からステイシーにコーチングを行ってきた。COOの採用問題について相談された時、筆者が真っ先に尋ねたのは、2度の失敗を通じて、採用プロセスをどのように見直したのか、ということだった。すると、採用プロセスの変更は行っていない、との答えが返ってきた。
狂気とは、同じことを延々と繰り返して、違う結果が生まれると期待することである、という古い格言がある。筆者のコーチング経験から言うと、ほとんどの人が自分では認めようとしなくてもステイシーのように行動している。その原因の一つは、効率性を追求したいという思いにある。そのような意識が働く結果、すでに確立されていて、おおむね無意識のうちに取る行動パターンに従ってしまうのである。
また、筆者が意思決定について研究と執筆をしてきた経験から学んだのは、過去を再検討することに時間と精神的エネルギーを費やしたがらない人が多いことだ。とりわけ、不愉快な失敗を含む経験について振り返ることを嫌う人は多い。しかし、立ち止まって過去の失敗を注意深く検討してこそ、今後はよりよい意思決定を下せるのだ。
自分の過去の意思決定をデータとして活用し、そこから有益な知見を掘り起こすことを試みよう。そうやって得られた知見は、あなたの足を引っ張っている可能性のあるバイアスや固定観念を明らかにし、未来の行動を変えるための戦略を確立して、究極的には、自社の行動が好ましい結果を生むという自信を抱く後押しになる。
過去の意思決定を再検討して得た教訓を目の前の状況に当てはめて活用するには、以下の問いを自分に投げかけるとよいだろう。
1. いま直面している意思決定は、どのようなものか。
思慮深い意思決定を行うための最初のステップは、いまどのような問題を解決したいのかをはっきりさせることだ。当たり前の話だと思うかもしれないが、このステップを怠る結果、不完全もしくは不満足なソリューションに到達してしまうケースは珍しくない。時として、人々は問題の内側から出発して問題を解決しようとする結果、問題を狭く定義しすぎたり、最悪の場合、問題を無視して、実行したいと思うソリューションに飛びついてしまったりする。