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なぜいま資本主義に倫理が必要なのか
編集部(以下色文字):資本主義は社会的格差や環境破壊などの問題を引き起こすなど、多くの欠陥があり、完璧なシステムとは言えません。しかしガブリエル教授は、近著『倫理資本主義の時代』の書名にもある通り、資本主義にまだ希望を見出しているようです。その理由についてお聞かせいただけますか。
マルクス・ガブリエル(以下略):資本主義について語られるとき、たいてい焦点が当てられるのは、疎外や搾取、収奪の問題です。これらは資本主義の初期から見られる現象であり、貪欲さや無意味な資本の蓄積、社会的不平等といった現代の問題を説明するために、マルクス主義の視点から論じられたものです。こうした点はまさに資本主義が抱える課題であり、多くの人々が認識している通りです。
しかし、それらは資本主義の本質ではなく、副産物にすぎません。私は著書『倫理資本主義の時代』において、資本主義の本質は3つの条件(生産手段の私有・自由契約・自由市場)が緩やかに結びついた結果であると主張しています。そのうちの「自由契約」に関する最も重要なものは、封建制からの解放、そして奴隷制の終焉です。つまり私は、資本主義がなければ奴隷制はけっして終わらなかっただろうと言いたいのです。現在でもある種の奴隷制度は存在していますが、堂々と続けられなくなったという点で少なくとも前進はしています。
そして重要なのは、私たちが資本主義に代わる何かを想像するのは不可能だということです。なぜなら、経済的な実践やシステムは、誰かの想像によって生まれるものではないからです。つまり、資本主義は計画されたものではなく、結果として存在するようになっただけなのです。
私は「このままのやり方を続けて、それを倫理資本主義と呼ぼう」と言っているわけではありません。改革は必要です。しかし、それこそが資本主義の本質です。私たちは資本主義が生み出した問題を解決するために、資本主義的な手段によって、資本主義を改革する必要があります。
問題に対する解決策を見つける最良の方法は、体系的で興味深く、実際に機能する方法を提供することであり、それを可能にするのがまさに資本主義です。資本主義は最高の食べ物、最高の住居、最高の交通手段を得るための最良の方法といえます。なぜなら、それらは計画されたものではなく、人間同士が協力した結果として生み出されたものだからです。
だからこそ、私は資本主義に希望を持っています。資本主義が本質的に欠陥をはらんでいるわけではありません。現代社会が抱える問題は、資本主義の負の要素から生じているのではなく、何らかの選択や状況の結果として偶発的に発生した副産物だということです。それが、私の資本主義に対する基本的な考え方になります。
