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心身のケアよりも、強さやヒロイズムを重視する文化が抱えるリスク
コロナ禍以降、「ケア」「レジリエンス」「ウェルビーイング」などがメディアで大きく取り上げられるようになった。それにもかかわらず、セルフケアの実践に苦労しているリーダーは多い。これまでの研究結果や経験、事例証拠から、最適な働きをし、ますます健康で有能なリーダーになるために、私たちは自分自身をケアしなければならないことを頭ではわかっているが、それを実践するのはまた別の話である。最近、筆者は21カ国の30人の教育リーダーを対象に、1週間のリーダーシップ研修を行った。そこで尋ねたところ、定期的にセルフケアを行っている人は一人もいなかった。また、多様な経歴、地域、業界にわたる他のクライアントのリーダーたちにも同じ傾向が見られ、セルフケアを課題と感じていた。
リーダーが自分自身のケアを優先させにくい理由には、個人的にも、構造的にも、さまざまな理由がある。リーダーシップという感情労働(感情のコントロールが要求される仕事)だけでもエネルギーを消耗するものだ。そしてセルフケアに関しては、誰もが性格や経験、社会性、家族などに基づく、自分なりの考えや課題を持っている。あるクライアントは、スタッフの健康は「当たり前」に心配するが、自分の健康を心配するのは「当たり前ではない」と明かした。別のクライアントは、自分のために時間を使うのは、「贅沢で怠惰なこと」だと親戚に思われていると打ち明けた。
文化、社会、組織的な要素も、リーダーのセルフケアに対する姿勢に影響を与える。「私たちの文化ではそんなことはしない」というものから、あるクライアントに言わせれば、「強さとヒロイズム」をセルフケアよりも重視する組織文化まで、さまざまである。また、時間不足や、何をしたらよいかわからないといった知識不足も、セルフケアを妨げる障壁として挙げられた。
では、レジリエンスの高い持続可能なリーダーシップを実践し、模範を示す一環として、セルフケアを取り入れるには、どうしたらよいのだろうか。行動を変えるには、まず考え方を変えることだ。それができたら、これらのアイデアを実践に移す方法を取り入れよう。
内面へのケアと共感を自分自身に許す
いま自分をねぎらっていないのなら、なぜそうしないのか自問しよう。自分のケアを行わない理由は何なのか。どのような理由でも、そのことと、人が最適な機能を果たす上での健康の重要性とを天秤にかけてみよう。会社において自分がイメージする健全なリーダーシップを実践し、模範を示す全面的な許可を自分に与えよう。
そこにいる自分と向き合う
この表現に違和感や胡散臭さを感じる人もいるかもしれない。要は、すでに実践していることを土台にして、そこから始めよう。年に一度の健康診断で健康状態をチェックしたり、出張した際の食事や運動面で改善できることを見つけたり、人に手助けやサポートを求めたい仕事を次のチームミーティングで洗い出したりしよう。
オール・オア・ナッシングと考えない
セルフケア「ゼロ」の状態からいきなり「すべて完璧」な状態にはできない。紆余曲折は付き物であり、成功する時も失敗する時もあるが、それが正常である。運動を1日さぼったり、締め切りのために徹夜したりした場合は、翌日に調整すればよいのだ。
同僚から学ぶ
筆者のクライアントの多くは、周囲の人が積極的にセルフケアを優先して、境界線を主張したり、メンタルヘルス休暇を含めた休暇を取ったりしているのを(尊敬の念や不満を覚えながら)見ている。彼らのやり方を参考にしよう。自分に合いそうなケアのアイデアを人から借りよう。