ゲーマーが職場によい影響を与える理由
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サマリー:多くのマネジャーは、ビデオゲームは規律と生産性に悪影響を及ぼすもので、時間の浪費にほかならないと思い込んでる。しかし、こうした認識とは異なる研究結果が増えている。それらの研究は、ゲームをプレーすると、... もっと見る組織における成功と非常に関連性の高い認知スキル、社会スキル、そして感情的なスキルを身につけられると示唆しているのだ。本稿では、ゲーマーの持つスキルを組織に取り入れるインクルーシブな職場をつくるために、マネジャーができることを紹介する。 閉じる

ゲームは本当に時間の無駄なのか

 多くの職場で、ビデオゲームは依然としてタブー視されている。規律と生産性に悪影響を及ぼす、取るに足らない活動だと、多くのマネジャーは考えているのだ。ゲームなど時間の浪費にほかならず、自分の世界に引きこもっている兆候だという認識はいまも根強い。

 しかし、こうした認識とは異なる研究結果が増えている。それらの研究からは、ゲームをプレーすると、組織における成功と非常に関連性の高い認知スキル、社会スキル、そして感情的なスキルを身につけることができると示唆されている。つまり、スポーツやボランティア、料理などの趣味に興じるのと少なくとも同じくらいプラスになる可能性があるというのだ。実際、組織が複雑かつ急変する環境に直面する中、ゲームで身につくスキルは、ますます重要になりつつある。いまこそ、時代遅れの思い込みに疑問を投げかけ、ゲームが職場にもたらす価値を認め、何らかの行動を起こすべきだ。

ゲーマーのための場所

 本稿で「ゲーマー」とは、非常に広いカテゴリーを意味する。というのも、ゲームにもよるが、ゲームをプレーするとさまざまな形でメリットがあることがわかっているからだ。たとえば、ボードゲームは社会的交流を促進し、知性を刺激する。また、他者との競争(ゲームに勝つために)と協力(ルールを守ったり交渉したりするために)のバランスを取る訓練にもなる。これはスポーツと違わないし、ビジネス組織とも非常によく似ている。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)のようなテーブルトップ・ロールプレイング・ゲーム(TTRPG)では、社会的な交流や創造性、チームワーク、共感など、未来の労働者とリーダーにプラスとなる資質を高めることができる。事実、この手のゲームをプレーする人は、人づき合いが苦手で心配性の内向的な人物だというイメージや思い込みがあるが、真実ではないという証拠がある。実際は、むしろ正反対なのだ。ある研究で、成人25人に1年間、D&Dを定期的にプレーしてもらったところ、不安やストレス、抑鬱が低下する一方で、自尊心と自己効力感は上昇したという。さらに、801人を対象にした大規模調査では、平均399人のゲーマーが、ゲームをやらない402人よりも高い外向性と、新しい経験へのオープン性、そして感情的安定を示した。

 TTRPGは、本質的にコラボレーションを伴うゲームであるため、組織を過度にスポーツに例えることから生じうる文化的な問題を回避できる。スポーツになぞらえるような過度のたとえは、ビジネス環境における競争に注目しすぎて、コミュニティ構築やコラボレーション、共創といった重要要素を見落とす可能性がある。これに対してTTRPGに例えると、従業員は組織を英雄的な冒険者の集まりと見なし、互いの能力を補完しあって、その領域全体で素晴らしいことを成すよう促す。

 また、ビデオゲームは長年ネガティブな扱われ方をしてきたが、さまざまなビデオゲームに関する最近の研究のレビューは、ビデオゲームが認知スキル(より素早い反応や処理スピード、記憶力の向上など)を高められるほか、ストレス管理(ストレスの軽減やレジリエンスの向上など)にもプラスになることを示唆している。

ゲームを「普通のこと」にする

 ゲーマーを擁護する記事を書いたのは、筆者が初めてではない。10年前、マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員研究員(当時)だったマイケル・シュレージは、数百人~数千人がネットで同時参加できるゲーム(MMORPG:『World of Warcraft』や『マインクラフト』)のプレーヤーに関するディスカッションで、このようなゲームが認知能力や社会性、適応性、自己規律を高めることを指摘した。シュレージは、ゲームについて不合理な偏見があることを指摘し、経営者たちはみずからの無知を克服して、エリート主義的なやり方をひとまず脇に置いて、ゲーマーを受け入れるよう呼びかけた。