優秀な部下を辞めさせない5つのアクション
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サマリー:ハイパフォーマーは高い生産性と影響力を持つが、多くのマネジャーは彼らにはサポートが不要であると誤解し、放置しがちである。その結果、孤立やモチベーション低下につながる可能性がある。ハイパフォーマーは認め... もっと見るられること、成長機会、そして裁量を求めており、感謝や挑戦、昇進、信頼を通じた具体的なサポートが不可欠である。 閉じる

能力の高い人を放置していないか

 どのような組織でも、能力の高い人(ハイパフォーマー)はイノベーションや生産性、卓越性の原動力となる。常に期待を上回る成果を出し、限界を押し広げ、周囲の人たちを鼓舞する。一般に、ハイパフォーマーの生産性は平均的な従業員の4倍、ソフトウェア開発など極めて複雑な職種では8倍にもなる。彼らは組織のミッションと収益にとって決定的に重要な存在であるにもかかわらず、見過ごされがちだ。それどころかマネジャーは、ただちに介入する必要がある能力の低い従業員を注視する。このアンバランスな注目度は代償を伴う。無気力や不満、そして究極的には優秀な人材の喪失へとつながりうるのだ。

 多くのマネジャーは、ハイパフォーマーは何でも自分でできて、さほど注視する必要がないと思い込んでいる。十分活躍しているから、他の従業員が必要とするレベルの手引きやサポートは必要がないと考える。すでに卓越した結果を出していて、問題がないのだから、何を是正する必要があるだろう、というわけだ。この考え方はある意味では正しい。だが、これでは困難に直面しても自分で対処するよう放置され、自分の快適な領域から踏み出す(その時初めて学びが始まる)こともないことになる。独立性は重要だが、直接的なサポートやフィードバックがないと、孤立感や放置されている感覚が生まれかねない。ハイパフォーマーは成長し、フィードバックをもらい、現在よりも一段上のレベルの仕事を任される機会を求めており、こうしたニーズが満たされないと、強力な結果を出していても、急速にやる気を失うおそれがある。

 では、ハイパフォーマーは職場で本当に何を望んでいるのか。それは認められること、成長の機会、そして裁量だが、彼らのコミットメントを維持するためには、こうしたニーズを理解するだけでは不十分だ。そこで、ターゲットを絞ったアクション(感謝、挑戦、昇進、信頼)を取れば、不可欠なチームメンバーが情熱とやる気を維持できる環境をつくれる。

1. 承認と感謝

 ハイパフォーマーは、成功のたびに確認を求めない。次の課題のことで頭がいっぱいだからだ。だが、自分の貢献に気づいてもらい、感謝されることは望んでいる。期待されること、たとえば時間通りに姿を見せるとか、標準的な締め切りを守るといったことに対して与えられる、「おつかれさま」といった一般的な表現では不十分だ。彼らは、自分の優れた仕事ぶりを上司が認知していると感じたいのだ。複雑なプロジェクトへの献身であれ、独創的な問題解決であれ、チームをまとめる能力であれ、ハイパフォーマーを具体的にほめよう。ひょっとすると、彼らはプロジェクトのボトルネックを見つけて是正したり、あなたが切実に必要としていたけれど気づかなかった新機能を導入したり、システムの問題を解決したり、チームをレベルアップするための研修を企画したりしたかもしれない。こうしたことはすべて想定外の解決策であり、感謝の気持ちを示す必要がある。

 研究によると、ポジティブなスキルと貢献を承認すると、それを受けた人のモチベーションが高まるだけでなく、チーム全体に強力な波及効果がある。こうした承認は必ずしも公開で行われる必要はないが、有意義な形であるべきだ。静かな感謝の言葉や、思いやりのあるメモを渡されれば十分な人もいれば、チームミーティングやリンクトインなどの公開の場でほめられることを感謝する人もいる。重要なのは、ハイパフォーマーそれぞれがどのような承認方法を好むかを理解し、それに応じたアプローチを取ることだ。

2. 成長とチャレンジの機会

 ハイパフォーマーは、困難に直面すると大活躍する。単に期待に応えるだけでは満足せず、期待を超えたいと思っている。彼らにとって魅力的な職場であり続けるために、彼らの能力を伸ばす機会を与える必要がある。それは困難な任務だったり、部門横断的なプロジェクト、あるいは快適な領域から踏み出す必要がある役割だったりするだろう。

 ハイパフォーマーの強みと情熱に見合った機会を見極めるためには、彼らを深くまで知り、何が彼らを動かすのかを学ぶことだ。定期的な一対一の会話や廊下での立ち話でも、彼らの関心や長期的な目標、そして彼らが伸ばしたい領域を知る役に立つ。どのようなことなら簡単で、どのようなことは難しく感じられるのか、キャリアの方向性、そしてどのようなスキルを磨いたり学んだりしたいのかを尋ねよう。このインサイトがあれば、彼らの才能と願望に合った任務を与えることができ、彼らの成功を上司が気にかけているという強いサインを送ることができる。重要なのは、彼らが純粋に情熱を感じる領域で能力を伸ばす機会をつくることだ。

 ただ、難しいプロジェクトを渡すだけではいけない。成功するために必要なツールやリソース、裁量を与えよう。部門横断的な役割の場合は、他の部門のリーダーに様子を聞こう。また、ハイパフォーマー本人に状況を聞き、何を学んでいるか、事前に知っておけばよかったことはないか尋ねよう。彼らが成功の道筋を見つけるために、大局観や歴史的背景を教えよう。こうしたことは、彼らが成功することにあなたが関心を持っているサインになる。