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権力と統制を受け入れることに回帰している
新著Leading Through(未訳)で、共著者のキム B. クラーク(元ハーバード・ビジネス・スクール学部長)、息子のジョナサン(テキサス大学サンアントニオ校経営学教授)、娘のエリン(経営コンサルタント)は、権力志向のリーダーシップモデルの終焉を告げ、新しいアプローチとして「リーディングスルー」のパラダイムを紹介している。この新しいリーダーシップのモデルは、意識的によいことをして、物事をよりよくしようと努めるものだ。人々を気遣い、彼らが成長できるように支援して、困難な問題の解決を目指し、人々を駆り立てる。これら3つの要素がリーダーシップの魂であり、心であり、精神である。そして、これらの要素を活性化させるためには、リーダーシップの個人的および組織的な側面に注意深く目を向けなければならない。本稿は、新著からの抜粋を編集したものである。
私たちは素晴らしい時代を迎えている。テクノロジーと組織の生産力を、人間性と強い目的意識の力と結びつける方法を学んで、人々やコミュニティを繁栄させ、真に卓越した価値を実現できるのだ。
その潜在的な力をさらに引き出すためには、私たちが知っているものとはまったく異なるやり方で組織を再考する必要がある。筆者らは近年、その可能性を垣間見てきた。
新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた時期に、人々の精神力がテクノロジー、目的意識と呼応して、前例のないイノベーションや成長を推進するという目覚ましい実例を私たちは目撃した。私たちの生活のあらゆる面に影響を及ぼし、無関係でいられた者はなく、誰もが何かしらを失った危機だったにもかかわらず。人類の最高の精神力が発揮された瞬間だった。
ただし、同時に、私たちを隔てる溝が広がり、深まっていくことも目の当たりにした。世界規模の地政学的なものだけではない。組織の内部では、団結や革新の精神が、労働者の広範な不満の溝にあっという間に取って代わられた。
大退職時代(グレートレジグネーション)は、私たちへの警告だった。広く報道されてきた組織に対するかつてないほど深い不満と不信が、差し迫った課題であることは間違いない。それでも、組織の権力と支配を強化するという聞き慣れた圧力に屈し、人や目的意識、生産性の真の向上を犠牲にして、コストの迅速な削減を優先する余裕はないはずだ。
その代償はあまりにも大きい。バーンアウト(燃え尽き症候群)がますます蔓延していることや、職場でのいじめやハラスメントを見ればわかる通りだ。不安や鬱の深刻な症状を訴える大人も急増している。組織や業界で毎年実施されている従業員のエンゲージメントに関する調査でも、全般的な不満が見て取れる。