最高収益責任者をすぐに辞めさせることの悪影響
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サマリー:最高収益責任者(CRO)の平均在任期間は、わずか25カ月とさまざまな最高責任者の中でも最も短くなっている。これは、企業が成長していない時に責任を問われやすいのがCROであるためだ。しかし、筆者らの調査によると... もっと見る、CROの交代は成長をいっそう抑制し、原則につながる可能性が高いという。本稿では、CROや社内の後継者が厳しい市場環境において、持続的な成長を推進するためにCEOが取るべき行動を紹介する。 閉じる

最高収益責任者(CRO)をすぐに辞めさせてよいのか

 今日の最高収益責任者(CRO)の平均在任期間は、さまざまな最高責任者の中で最も短い25カ月だ。多くの企業にとってこの期間は、自社製品の販売サイクル2回分にも満たない。

 CROの在任期間がどんどん短くなってきているのは偶然ではない。多くの企業は依然として持続的な成長をなかなか実現できずにいる。筆者らの調査によると、過去3年間に少なくとも1年間のマイナス成長を経験した企業は43%に上り、同期間の成長率が毎年一貫して増加した企業は3%にも満たなかった。

 成長が困難な中で、取締役会による対応措置として最も一般的なものの一つが、CROの解任だ。前述の調査では、CROの離職は2022年から2023年にかけて50%以上増えていた(そのうち70%は退任を求められた)。この傾向は弱まる兆しがなく、CEOを対象とした筆者らの調査において、自社のCROは組織の商業的成功を導くことができると回答したCEOは41%に留まった。

 企業が成長していない時に誰かが責任を問われるべきだと考えるのは、ごく自然なことだ。しかしCROの交代は、成長をいっそう抑制し、減速につながる可能性が高い。経営陣は、この点を注意深く慎重に考慮したうえで、行動を起こすとよいだろう。

CROが退任した後の展開

 CROの交代が企業業績に与える影響を理解するために、筆者らは米国とカナダの公開企業と非公開企業を対象に分析を行った。できるだけ「同条件」で比較するため、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)、IT、コマーシャルサービスの業界に焦点を絞り、年間収益が1億~50億ドルの企業を対象とした。さらに、複数年にわたる信頼性の高い財務実績データを有する企業に限定した。

 そのうえでリンクトインのプロフィールを徹底的に調査して、CRO、営業部長、その他の収益担当の最高位の役職の交代が確認された164社を特定した。次に、前CROの在任最後の会計年度の通年の業績と新しいCROの就任後の最初の会計年度の通年の業績を比較して、新CROがその役職に慣れるまでの期間を「公平に」評価し、CRO交代と会社の業績を照合した。

 筆者らの分析は、厳しい現実を浮き彫りにしている。実に62%もの企業で、CROが交代した翌年の収益成長率が低下または横這いになった。CRO交代の前年の平均成長率は15.5%だったものの、交代後最初の1年の平均は11.7%と低下し、下落の中央値は約4パーセントポイントだった。

 とはいえ、この数字にはわずかながらも明るい兆しが隠れている。CRO交代前の1年間に企業の成長が横這いまたは低下した場合、翌年にはわずかではあるものの成長に転じる可能性が高くなる(翌年の成長率は3.2%)。しかし、企業が成長していたとしても、経営陣が期待するほどの成長率ではなかった場合、CROの交代はマイナスの影響をもたらし、交代後の最初の会計年度に成長率が8パーセントポイント以上も低下する。成長率を数ポイント上げたくてCROを交代させても、たいてい裏目に出るのだ。