「発明資本会社」とは何か

 私の会社インテレクチュアル・ベンチャーズは、どうも誤解されやすい。我々はこれまで、「特許荒らし」、すなわち特許を買い上げ、これを利用して、罪のない企業に不当な要求を突きつける無法者集団として非難されてきた。

 しかし、我々が実際に取り組んでいることは、たとえば新興企業を支援するベンチャー・キャピタル(VC)市場、うまく回らなくなった企業を再活性化するプライベート・エクイティ(PE)市場よろしく、発明の資本市場をつくり出すことである。最終的には、たくさんの発明が生まれてくるよう、応用研究を収益性の高い活動に変え、ここへの民間投資をいま以上に増やすことが目標である。

 次のように言う人もいるだろう。

「ばかげている。発明行為(inventing)それ自体はビジネスになりえない。あまりにリスクが高いし、発明(invention)は無形であるため、それによって十分な利益を生み出せない。それに、優れたアイデアを製品化する役割を担っている企業を脇に置いて、発明行為や発明を考えることはできない。発明を取引する市場をつくるなど、まったくばかばかしい」

 私は断固反対である。たとえば1970年代、同じく無形の知的資産であるソフトウエアにも同じようなことがいわれていた。当時、コンピュータ業界の関係者は、ソフトウエアの価値は汎用コンピュータやミニコンの販売に役立つ程度のもので、ソフトウエアだけを販売することなどありえないと考えていた。

 そのため、ソフトウエア技術者の多くが、コンピュータ・メーカーやそのユーザー企業で働いていた。独立系ソフトウエア・ベンダーの数はごくわずかで、しかもほとんど利益が出ていなかった。「ソフトウエアには、ビジネスとしての未来はない」。みなそう言っていた。

 言うまでもなく、これら全員が間違っていた。その後の30年間、ソフトウエアは史上最大の高収益産業の一つに発展した。私自身、マイクロソフトのマネジャーとして、また最後はそこのCTO(最高技術責任者)として、この驚くべきサクセス・ストーリーを間近で見ていた一人でもある。

 ソフトウエアが急成長したのは、次の2つの出来事に負うところが大きい。