製品とサービスを組み合わせる
ハイブリッド・ソリューション

 まず失敗例を紹介しよう。

 オンライン動画プロバイダーのアキンボ・システムズが2004年、セットトップ・ボックスと映画のダウンロード・サービスを組み合わせて販売することを決定した時、この組み合わせは非の打ちどころがないように見えた。製品とサービスは密接にして不可分の関係にあり、いずれも他方がないと役に立たない。

 デジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)の販売によって安定的な定期収入が生まれるであろうし、動画のダウンロードという便利なサービスを望む顧客はこのハードウエアを買わざるをえないだろうと思われた。

 しかし、このセット商品で価値の低いほう、つまりセットトップ・ボックスに199ドルという高い値段をつけたことで、アキンボはつまずいた。実はダウンロード・サービスが利益を生み出すことを理解していなかった。

 映画のサービス代金をユーザーに課金したことで、状況は暗転する。映画はとても高画質とはいえなかった。その結果、ユーザーたちはセットトップ・ボックスに大金を支払わされたうえに、こんな代物にも料金を支払わなければならないことに腹を立てた。この商品は失敗に終わり、アキンボは2008年に破綻を申請した。

 昨今、多くの企業が売上げを伸ばし、キャッシュフローを安定化させるために、製品とサービスを組み合わせようとしている。ハイブリッド・ソリューション、つまり製品とサービスを一体化させた新製品は、これまで以上に高い価値を提供することで、新規顧客を呼び込み、既存顧客の需要を押し上げる一助となる。

 このやり方は、いまや当たり前になりつつある。〈iPod〉製品と〈iTunes〉サービスを組み合わせたアップル、コピー機やプリンターとメインテナンスや顧客サポート・サービスをセット販売しているゼロックスを考えてみればよい。この両社に限らず、多くの企業が、このハイブリッド・ソリューションによって成長を後押ししたり、市場シェアや利益をV字回復させたりしている。

 製品とサービスの一体化は将来有望といえるが、失敗もしやすい。問題は、あまりにも多くの企業が成功に目がくらみ、このような製品をどのように設計し、どのようにマーケティングを展開し、どのように販売するのか、きちんと検討していないことである。