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カリフォルニア・キュイジーヌの創始者
アリス L. ウォータースは1971年──当時は一流レストランのシェフでさえ冷凍の肉を使っていた──カリフォルニア州バークレーに「シェ・パニース」というレストランをオープンした。
彼女は、あまり手を加えず食材の新鮮さを大事にすることで、新境地を開いた。ヨーロッパやトルコで食べた料理に影響され、地元の食材を用いる彼女の料理スタイルは、カリフォルニア・キュイジーヌ[注1]として広く知られるようになる。
さらにウォータースは、さらなる商業的成功と後進の育成に努める一方、食と地域社会に関するみずからの構想に基づき、社会政治的な活動を推し進めてきた。オーガニック運動を支援し、地元の農家や他の生産者と密接な関係を築く彼女の姿勢は、近年サステナビリティに注目する産業界と相通じるものがある。
とはいえ、景気のことを考えると、彼女が消費者や食品業界全体に寄せる期待ははたして現実的といえるのか、疑問視する向きもある。事実、ウォータースの質へのかたくななこだわりが原因で、事業に大問題が生じたことがこれまで何度かあった。
彼女は自分より財務に詳しい人たちに経営を任せてきたが、すると、たとえばカルドンというイタリア野菜を贅沢に使用するのをやめさせようとした。最終的に、彼ら彼女らに口出しすることを禁じた。また、倒産の危機に陥ったことも一度や二度ではない。
それでもシェ・パニースが、何とかやってきただけでなく、世界トップ・クラスのレストランとして認められるまでに至ったのはなぜだろう。現在の不況に限らず、不景気を乗り切る秘訣は何か。
ウォータースはこれらの疑問に答えながら、みずからの考えを明かしてくれた。
好不況にかかわらず「質」にこだわる
HBR(以下色文字):あなたはいつも、食材の質を最優先に考えていますね。深刻な不況にある現在でも、その考え方に変わりはありませんか。