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ITとインターネットはどのように社会を変えるのか
2008年、金融市場が崩壊した。このような出来事が起こると、実存主義的な問題が提起される。
時間がますます希少になるなか、価値観をどのように見直せばよいのか。学んだ教訓を通して、未来はもちろん、現在の難問に取り組む準備ができているのか。社会のルールは、後戻りできないくらい変わってしまったのか──。
社会や経済の現在と近未来を探るために、HBR誌のシニア・エディター(当時)、ダイアン・クーツが、新世界を大胆に描き出すSF作家コリイ・ドクトロウにインタビューを試みた。
1971年生まれのドクトロウは、これまでに4篇の小説を上梓している。そのなかの『ニューヨーク・タイムズ』誌が選ぶベストセラーに名を連ねたLittle Brother[注1]は、ジョージ・オーウェルの『1984年』[注2]に着想を得た未来小説である。
彼は、ITと文化をテーマにした人気サイト「ボイン・ボイン」(Boing Boing)の共同編集人であり、インターネット上の市民権を守るエレクトロニック・フロンティア・ファウンデーションのヨーロッパ担当ディレクターを務めたこともある。
そのほか、2006年から2007年にかけての1年間、南カリフォルニア大学のアネンバーグ公共政策センターで、公共政策分野のカナダ-アメリカ・フルブライト客員研究員を務めていた。
ドクトロウは2時間の電話インタビューのなかで、ITやインターネットは、オーウェル的な脅威から、個人的な表現を実現するツールに変わるという楽観的なビジョンを描いてみせた。
この新世界の特徴のいくつかはおなじみのものだろう。とはいえドクトロウは、たとえば活字がいますぐに廃れるとは思っていない。その一方、「現在だれもが後ろめたく思っているが、日常的なインターネット上の非商業的な情報交換も、いずれ著作権法が変わり、合法化される日が訪れるだろう」とも述べている(囲み「インターネットの今後」を参照)。