
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
地政学的リスクが高まる中で企業はどう行動すべきか
世界の地政学的状況の先行きを見通すことは容易ではない。ほとんどのビジネスリーダーがこれまで慣れ親しんできた世界秩序は、いまや第2次世界大戦以来とまでは言わないまでも、冷戦が終焉して以来、最大の難題に直面している。欧州と中東で戦争が起こり、インド太平洋地域でも緊張が高まるなど、世界はいっそう不安定になり、予測可能性が低下している。
世界は、地政学的なハードランディングに突き進んでいるように思える。そして、そのシナリオから抜け出すことは非常に難しく、その結果として世界の安定と成長が脅かされるおそれがある。
企業のCEOや取締役会のメンバーが変化の激しい世界に向き合うに当たり、最も多く用いる言葉は「リスク」だ。自社の従業員、自社のオペレーション、株主、その他のステークホルダーにとってのリスクとは、どのようなものか。どうすれば、サプライチェーンのリスクを取り除けるのか。感染症の世界的流行に始まり、サイバー攻撃や戦争に至るまで、まだ検討していない、もしくは対応の準備ができていないリスクには、どのようなものがあるか。
この10年ほどの間、地政学的現実がより困難なものになるのに伴い、新しい企業リーダーのモデルが出現してきた。これまで世界の平和と安全を支えてきた「パックス・アメリカーナ」が試され、それを維持するために本格的なリーダーシップが求められる状況に適応し、イノベーションを達成し、成長を遂げたいと考える企業は、以下の5つのルールに従って行動すべきだ。
プロセスに参加し、積極的に役割を果たす
世界経済が空前の規模に成長する道を開いた市場経済システムは、ルールと制度に依存している。そして、そのようなルールと制度は、力によって、とりわけ力を行使しようという意思を持った民主主義体制の国民国家──すなわち米国とその同盟国や友好国──によって施行され、保護されてきた。
しかし、グローバルなビジネスを保護しているのは、政府だけではない。民間セクターも地政学に関して大きな役割を果たしている。そうした状況は、今日の知識主導・イノベーション主導の世界でいっそう浮き彫りになり始めた。
いまや世界トップクラスのグローバル企業の売上高は、およそ4分の3の国のGDP(国内総生産)を上回っている。このような巨大企業はしばしば、人材や最先端のテクノロジーなど、一国の政府が持っていない多種多様な能力を持っている。
たとえば、米国のテクノロジー企業は、2022年にロシア軍がウクライナに侵攻するよりも前から、ウクライナをサイバー攻撃から防御する活動に携わっていた。また、今日の大国間競争の勝敗を決する可能性を持ったテクノロジー、すなわちAIの開発を担っているのは、主として民間の企業や研究施設だ。