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ハイブリッド勤務に関する実態調査
アマゾン・ドットコムは最近、従業員に週5日のオフィス勤務再開(RTO)を求めた。これは注目を集める大企業がリモートワーク方針を撤回する動きを見せる新たな事例だ。RTOの支持者はしばしば対面でのつながりの重要性に言及し、元グーグルCEOのエリック・シュミットは「グーグルは勝つことよりも、ワークライフバランスや家に早く帰ること、在宅勤務のほうが重要だと判断した」とまで主張している。
筆者らが最近、従業員に3日出社または5日出社のスケジュールをランダムに割り当てて行った実態調査は、ハイブリッド勤務が離職率を低下させ、利益を向上させるという確固たる証拠を示すことができた。実際、調査結果は非常に説得力のあるものであったため、同社のミドルマネジャーらは在宅勤務に対する従来の懐疑的な態度を改めた。
実験結果
筆者らが協働したのは、4万人の従業員を擁する世界有数のオンライン旅行会社、トリップドットコムである。筆者らの一人であるジェイムズは、同社の共同創業者兼会長を務めている。
同社の中国拠点でマーケティング、財務、経理、エンジニアリングに従事する従業員およそ1600人が調査に志願し、誕生日が奇数か偶数かに応じてランダムに2つのグループに分けられた。一方のグループは対照群として、6カ月にわたり週5日オフィスに出社した。もう一方のグループは処理群として、同じ期間にわたり月曜日、火曜日、木曜日のみ出社した。このハイブリッド勤務のスケジュールを設計した狙いは、協働を促進するためである。
6カ月間の実験から得たデータと、その後の2年間にわたる業績評価を分析したところ、両グループ間での生産性、パフォーマンスのレベル、昇進のいずれにも差は見られなかった。
実験の前に、マネジャーたちはハイブリッドによって生産性が2.6%下がるだろうと予測していた。6カ月間の実験後、彼らは生産性が1%向上したと判断した。ハイブリッド勤務者は仕事への満足度が向上し、離職率は35%減少した。離職率の減少は特に女性従業員の間で顕著だった。また、非管理職、および通勤に1.5時間以上かかる従業員の間でも、ハイブリッドによって離職率が大幅に減少した。
人材マネジメント協会によれば、企業に生じる離職1件当たりのコストは、最低でも従業員の年収の50%に及ぶ。トリップドットコムの場合、これは離職1件につき約3万ドルに相当する。実験では、従業員がハイブリッド勤務に非常に満足したため、離職率が3割以上低下し、同社は年間で数百万ドルを節約したことになる。
マネジメント上の教訓
この調査が『ネイチャー』誌に発表された後、企業幹部らはさらなる詳細に強い関心を示した。トリップドットコムにおけるハイブリッド勤務の成功には、3つの重要な要因が寄与していると筆者らは考える。