あなたが戦略的思考の持ち主だと知らしめる方法
Illustration by Vilmante Juozaityte ‘Bulma’
サマリー:自分は戦略的な思考を持っていると考えているにもかかわらず、上司から「君はあまり戦略的ではない」と言われてしまったら、どうすればよいだろうか。このように言われてしまうのは、あなたに戦略的思考がないからで... もっと見るはない。戦略的な意思決定が周囲の目に見えていないからだ。本稿では、リーダーが自分は戦略的であると示すことが難しい3つの主な理由を挙げるとともに、戦略的思考のスキルをより効果的に明確化して知らしめる方法を提案する。 閉じる

なぜリーダーの戦略的思考は周囲に伝わりにくいのか

 テクノロジー系のエグゼクティブで筆者のクライアントであるジェイソンは、ある企業にスカウトされ、重要なイニシアティブの指揮を任された。新しい職に就いて1年が経った頃、CEOとの数回のミーティングで、あることが明らかになった。CEOはジェイソンがそのポストにふさわしいかどうか、疑っていたのだ。CEOは率直な言葉でその不安を伝えた。「君はあまり戦略的ではないようだ」

 ジェイソンは驚いた。彼がスカウトされたのは、まさに戦略的な思考とアプローチが評価されたからだったのだ。もう少し具体的なフィードバックを求めたが、CEOは明確に答えることができなかった。

 この混乱で発覚したのは、CEOがジェイソンの戦略的な仕事をほとんど把握していなかったということだ。ジェイソンの問題は、彼の戦略的な思考ではなく、むしろ彼の戦略的な意思決定が目に見えないことに原因があった。こうした状況はよくある問題を浮き彫りにする。あなたの戦略が周囲に見えず、理解されなければ、その戦略はまったく存在しないも同然なのだ。

 より戦略的になる必要があると指摘されたリーダーがまず思いつくのは、戦略の具体的な例や定義を確認して説明を試みることだろう。これは意図的なものではあるが、過剰な自己防衛とも受け取られかねない。最初のフィードバック自体が、リーダーとステークホルダーの間で明確なコミュニケーションと理解が足りないことから生じている場合も少なくない。ステークホルダーが「戦略的である」とはどういう意味かを明確に説明できないことが、曖昧なフィードバックにつながっているかもしれない。

 ただ、明確な説明を求めるより、自分の戦略を積極的に示すほうが効果的だ。本稿では、リーダーが自分は戦略的であると示すことが難しい3つの主な理由を挙げるとともに、戦略的思考のスキルをより効果的に明確化して知らしめる方法を提案する。

1. 戦略は概念的で理論的だと感じられやすい

 基本的に戦略に関する会話には、ビジョン、長期計画、将来の脅威、機会など、定量化や説明をしにくい抽象的な概念が含まれる。この複雑さに、市場分析や競合他社のポジショニングなど、より具体的な要因を関連づける必要性が加わって、統合されたナラティブの構築が難しくなる。

 研究が示す通り、戦略的な意思決定は、その文脈を理解しなければ適切に理解できない。文脈を説明する方法には以下のようなものがある。

ストーリーテリングを活用する

 ストーリーテリングは、抽象的な戦略の概念を、関連性があり記憶に残りやすいものにする強力なツールだ。聴衆の感情と知性に訴えるストーリーは複雑なアイデアを簡潔にし、実行可能なビジネスプランに変えていく。説得力のあるナラティブはステークホルダーに戦略を浸透させ、理解と記憶を促す。