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ジェンダー平等は自然に実現されない
米国では2023年、20年ぶりに男女の賃金格差が拡大した。男性の賃金の中央値は3%増えたのに対し、女性の賃金の中央値は1.5%増に留まった。この後退に驚く人は少なくない。「時間が経てば、社会は自動的かつ着実に進歩する」という、米国で広く信じられている考え方に反していたからだ。そこでは、「次の世代は前の世代よりも平等になり、より多くの機会を享受する」と考えられている。ジェンダー平等の実現も「必然」であり、ただ少しばかり時間がかかるだけだ。
だが、調査が示しているのはまったく異なる現実である。実際には、社会科学者らによると、ジェンダー平等に向けた動きはここ数十年にわたり停滞している。女性の労働参加率は横ばい状態にあり、男性と女性は依然として職種によって偏りがある。そして女性は引き続き、男性よりも大幅に多くの家事と育児を担っている。
このゆっくりとした(停滞さえした)変化のペースは、リーンイン・ドット・オルグとマッキンゼー・アンド・カンパニーが毎年共同発行する、10年目を迎えた報告書「職場における女性」(Women in the Workplace)2024年版での大きな発見だ。この報告書は、本稿の筆者2人が共同執筆したものであり、1000社以上の専門職従事者48万人以上(新人から経営幹部レベルまでが含まれる)のデータに基づき、米国企業における女性の現状を10年にわたり振り返った内容になっている。
この報告書では、この10年にわたる米国企業の歩みに対して、好評価と低評価が混在する「成績表」が与えられている。一方では、女性は企業内のあらゆるポジション、とりわけ上級管理職に占める割合で、重要な進歩を遂げてきた。だが、こうした進歩は確固たるものではない。
現在のペースでは、米国企業でパリティ(男女比が50%ずつと等しい状態)が実現するまでには、50年近くかかるだろう。しかもそれは、すべてが順調に進むと仮定した時の話であり、実際にはそうなる可能性はほとんどない。ルチカ T. マルホトラが『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)へ寄稿した「働く女性の立場は依然として不均衡な状態にある」で述べたように、これからの10年は、前の10年ほどの進歩が見られないのではないかと懸念されている。
ジェンダー平等の実現には時間だけでは足りない
職場における女性の経験は、さらに進歩が少ないことがわかった。何より懸念されるのは、世代間で改善がほとんど見られないことだ。それどころか、30歳以下の女性の経験は、50歳以上の女性の経験と似ているだけでなく、ある意味では、より悪くなっている。企業は、女性がキャリアの早い段階で直面する特有の障害に対処する必要がある。本稿では、この調査で明らかになった問題のいくつかと、企業が次世代の女性リーダーをよりよくサポートするために取るべき具体的な措置を提示する。