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ジェンダー平等は依然として不均衡な状態にある
10年前、筆者はテクノロジー業界のある企業を退職し、疲れ切っていた。その企業では、偏見や人種差別、セクハラを目撃し、みずからも経験していた。男女間の不平等については、女性は職場での成功に必要な意欲や自信に欠けているというのが周囲の一般的な見方だった。そうした環境の中で、野心ある優秀な女性の同僚、特に有色人種の女性が、不公平な目に遭うのを見るたび、認知的不協和を覚えたのだった。それでも、「女性はさらに頑張らなければならない」という見方が根強く残っていた。
そんな折、友人がマッキンゼー・アンド・カンパニーと非営利団体リーンインによる最新の「職場における女性」報告書を送ってくれた。その冒頭には「米国企業はジェンダー平等への道を歩んでいない」という文字が太字で書かれていた。筆者は驚きとともに、自分の考えが裏づけられたように感じた。そこには、自分がまさにこれまで理解しようと格闘してきた経験や違和感が調査結果として示されていたのだ。そしてこの調査をきっかけに、職場におけるジェンダー平等や人種平等の実現について、自分でも調査や提言、執筆を行うようになった。
幸い、この10年間で多くのことが改善された。ジェンダーや人種による不平等は、筆者が「女性側の問題」(fix women)と呼ぶような問題ではなく、構造的な問題としてオープンに受け入れられるようになった。リーダーたちは、これらの問題の解決に向けて取り組みを強めることを約束した。「バイアス」「マイクロアグレッション」「人種差別」といった言葉が企業で広く使われるようになった(あまりにも一般的になったため、筆者は「マイクロアグレッション」という用語を廃止し、「排除的行動」に置き換えるようリーダーたちに提言したほどだ)。
こうした進歩にもかかわらず、ジェンダー平等は依然として不均等な状態にある。DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の概念そのものに対する最近の政治的な攻撃や、人種およびジェンダー平等に対する企業のコミットメントの低下と相まって、この先の10年間には、これまでの10年間ほどの進歩は見られないことが懸念される。だからこそ、職場におけるジェンダー平等を実現するためにアクセルを踏み続けなければならないのだ。
企業におけるジェンダー平等の進捗状況に格差
2015年に初めて発表されて以来、『職場における女性』報告書は、年を追うごとに多面的で細やかな内容となり、米国企業における有色人種の女性の昇進を妨げる具体的な障壁について、詳細に記述されるようになった。最新版では、過去10年間の女性の経験を振り返っている。女性は現在、Cレベル職の29%を占め、2015年の17%から増加している。これは有意義な進歩ではあるが、このペースでは、白人女性の22年に比べ、アメリカ企業で有色人種の女性の平等が実現するまで48年かかることになる。